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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第22号(2005.7.31発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第22号
                  2005年7月31日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
     〜 化学平衡について

 2.化学をつくった人たち
     〜 アメデオ・アヴォガドロ

 3.あとがき
 -------------------------------------------

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  1.一風変わった化学の授業
          〜 化学平衡について 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、化学平衡についてです。
  まず前置きとして、可逆反応について見ていきます。


 可逆反応
 ─────

  例として、AとBが反応してCができる反応を考えます。

  化学反応式で書くと、

    A + B → C

 というようになります。

  一方で、この反応で生成するCから、AとBに戻る反応も起こるとす
 ると、この化学反応式は以下のように書くことができます。

    A + B ⇔ C

   ※本来ならば矢印「⇔」は、「→」と「←」を上下に組み合わせた
    ものを用いるのですが、文字として表示できないので「⇔」で代
    用しています。試験などでは、「→」と「←」を上下に組み合わ
    せた矢印を使用して下さい。


  ここで、左から右に進む反応(AとBからCができる:A+B→Cの
 反応)を「正反応」、右から左に進む反応(CからAとBができる:
 A+B←Cの反応)を「逆反応」と言います。


  そして、正反応と逆反応のどちらも可能な反応のことを「可逆反応」
 と言います。
  (⇒ 可逆反応の化学反応式は、A+B⇔C のようになります)

  また、正反応しか起こらない反応(あるいは逆反応がほとんど起こら
 ないような反応)のことを「不可逆反応」と言います。
  (⇒ 不可逆反応の化学反応式は、A+B→C となります)



 化学平衡
 ─────

  化学反応(可逆反応)において、正反応の速度と逆反応の速度が同じ
 で、見た目では反応が止まっているように見える状態のことを化学平衡
 と言います(単に平衡状態とも言います)。

  化学平衡のときでも反応が停止しているわけではなく、細かく見れば
 反応は起こっているということに少し着目してみて下さい。


  また、正反応の速度と逆反応の速度が同じというのは、A+B⇔Cの
 反応で考えると、AとBからCができるその瞬間に、CからAとBがで
 きているという状態のことです。

  ある特定の原子について考えれば、その原子は化学反応式の左辺に行
 ったり右辺に行ったりしているのですが、反応全体として見るとA+B
 の量とCの量が一定に保たれている状態が化学平衡の状態です。



 化学平衡を考えるときの一例として
 ─────────────────

  化学平衡や平衡の移動を考える場合には、天秤をイメージするといい
 かもしれません。

  化学反応式の左辺と右辺をそれぞれ天秤の両側に見立てて、つりあい
(バランス)を取っているイメージです。

  そしてこの天秤は、「必ずつりあいを保とうとするように動く」と考
 えて下さい。


  例えばA+B⇔Cの反応でAとBだけが存在しているとすると、左側
 (左辺)に傾いていてつりあいがとれないので、Cを生成する方向(右
 側)に反応が進みます。

  逆にCが多い場合にはつりあいを保つようにするため、左に反応が進
 みます。


  反応条件(温度や圧力など)が変化すると平衡が移動しますが、その
 条件の変化が天秤でいうところの左右どちらに影響があるのかを考える
 と、わかりやすくなるのではないかと思います。


  ※平衡の移動については次回もう少し詳しく書いていきたいと思って
 います。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
       〜 アメデオ・アヴォガドロ 〜
 ────────────────────────────────

  今回はイタリアの化学者、物理学者であるアヴォガドロを取り上げま
 す。
  「アヴォガドロの法則」や「アヴォガドロ定数」などで一度は名前を
 聞いたことのある人だと思います。



  アヴォガドロは1776年にイタリアのトリノで生まれました。

  父親が法律家だったことも影響して、大学では教会法を専攻します。

  1796年に法学博士を取得した後、3年間弁護士として活動してい
 ました。


  しかし1800年になると突然、数学や物理学を学び始めます。
  (これは同じイタリア人のヴォルタの研究(電気学上の発明や発見)
 に触発されたためと言われています)。

  そして、自然科学こそ自分の天職だと思うようになりました。


  その後トリノ・アカデミーの実験助手、ヴェルチェッリ大学の自然哲
 学教授を経て、トリノ大学で数理物理学教授に就任します。

  ただ、この頃激しさを増していたイタリア統一前夜の政治騒動の影響
 で、その職はほどなく廃止されてしまいました。

  しかし1834年に再度設置され、その2年後に復職することが叶い
 ます。その後は1850年に退職するまでトリノにとどまりました。



  アヴォガドロの名前は、「アヴォガドロの法則(発表当時は仮説)」
 で有名です。

  彼はそれまでに発表されていた、ドルトンの原子説(※1)とゲーリ
 ュサックの気体反応の法則(※2)の矛盾(※3)を解決する方法とし
 て、1811年にこの仮説を発表しました。

  その内容を以下に示します。

  ・第1の仮説:温度、圧力が等しければ、いかなる気体も同体積中に
         同数の粒子を含む

  ・第2の仮説:単体気体を構成している粒子は1つではなく、一定数
         の引力によって結合した元素分子から成る。

  原子がいくつか結合してできる「分子」という概念を用いることによ
 り、それまで矛盾すると思われていたことが解決できる画期的な考え方
 でしたが、当時はほとんど注目されることがありませんでした。



  当時支配的だった考えとして、電気(化学的)二元論というものがあ
 ります。

  これは、食塩(NaCl)のように、異なる電荷のものが引き合って
 結合することで物質がつくられているという考え方です。

  この考えに基づくと、同じ種類の原子(すなわち同じ電荷どうしの原
 子)が結合して分子をつくるということはあり得ないことになります。
 (同じ電荷どうしならば反発するはずだからです)。


  また、当時は有機化学的な研究が主流になりつつありました。

  扱う物質が主に固体や液体であり、必然的に重量を重視して研究を進
 めていくスタイルとなったため、気体や体積にはあまり注意が払われな
 かったという状況もありました。


  その他にも様々な要因が重なったこともあって、アヴォガドロが再三
 主張したにも関わらず、彼が生きている間にこの仮説が表舞台で注目さ
 れることはありませんでした。


  しかしその後時間が経過するにつれて、「分子」の概念を持たなかっ
 たことで様々な不都合が生じてくるようになります。

  特に正確な原子量を計算することができなかったことから、研究者に
 よって原子量が異なるのが最大の問題でした。


  これに終止符を打つきっかけとなったのが、1860年に開催された
 カールスルーエ国際会議です。

  イタリア人のカニッツァーロがアヴォガドロの仮説を取り上げ、懸命
 に主張していきました。

  アヴォガドロの仮説を用いれば問題の解決に役立つことがわかるにつ
 れて、次第に多くの化学者がこの説に納得するようになっていきます。


   ※この仮説はすでに実験的に証明されたので法則となり、現在は以
    下のような表現にまとめられています。

   ◎アヴォガドロの法則:すべての気体は同温、同圧では同体積中に
              同数の分子を含む。



  アヴォガドロは、存命中に脚光を浴びることはありませんでしたが、
 化学の進歩に大きな足跡を残した人と言えます。

  また彼は、アヴォガドロの法則のような気体化学に関する研究だけで
 なく、電気や液体の膨張、比熱、毛管現象などについての研究も行って
 います。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※1 ドルトンの原子説
    元素はそれ以上分割できない原子という粒子から成ること、そし
    て、化合物はいろいろな原子が一定の割合で集まってできたもの
    である、という説。

  ※2 気体反応の法則
    気体が反応するときには、同温同圧のもとで、その体積において
    簡単な整数比が成り立つ、という法則

  ※3 ドルトンの原子説と気体反応の法則の矛盾
    例えば水素と酸素から水ができる場合、体積比で水素:酸素:水
    =2:1:2であることがわかっていた。ここで水素と酸素が原子
    から成っているとすると、上記の比で水を生成させる(気体反応
    の法則を成り立たせる)には酸素原子を分割する必要があり、原
    子は分割できないというドルトンの原子説と矛盾する。   


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
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  7/29に放送された「にんげんドキュメント」(NHK総合)を見
 ました。

  米村でんじろう先生を取り上げたものだったのですが、そこで紹介さ
 れていた小学生に圧倒される思いでした。

  その熱意と粘り強さの点で思いっきり負けている自分に改めて気づい
 たところです。



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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