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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第27号(2006.9.30発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第27号
                  2006年9月30日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
     〜 フッ素について

 2.化学をつくった人たち
     〜 アーネスト・ソルヴェー

 3.あとがき
 -------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 フッ素について 〜
 ────────────────────────────────

  今回はフッ素についてです。
  身のまわりのものから意外な使われ方まで、特異な性質を利用した様
 々な用途があります。


 フッ素の特徴
 ───────

  フッ素は反応性が高いため、通常は単体では存在せず、何らかの化合
 物の形で存在しています(ホタル石(CaF2)や、氷晶石(Na3Al
 F6)などの鉱物中に主に含まれています)。

  またフッ素は、天然に存在する同位体としては質量数19のものだけ
 が存在します。

  さらに最大の電気陰性度を持つ元素であり、これがフッ素の性質を特
 徴づけています。


 フッ素の性質
 ───────

  単体は、常温で淡黄緑色の気体(ニ原子分子)で、特有の臭気があり
 ます。

  きわめて激しい化学反応性を有していることから、ほとんどの元素と
 直接作用してフッ化物をつくるのが特徴です。

  ※ここでの「反応性の高さ」は、酸化力が強い=相手から電子を奪う
   力が強い、ということです。


 フッ素の単離
 ───────

  初めてフッ素を単離したのは、フランスのモアッサンです。

  それまでの多くの化学者が不成功に終わる中で、注意深い観察と綿密
 な実験により、見事単離を成し遂げました。

  ※モアッサンについてもう少し詳しく知りたい方は、よろしければ私
   のメルマガのバックナンバーをご参照下さい。
 ⇒ http://www13.plala.or.jp/chem-hint/backnumber/021.html#2

  現在でも彼の単離方法を基にした方法でフッ素ガスは作られています。


 フッ素化学発展のきっかけ
 ─────────────

  工業的なフッ素の製造は、第2次世界大戦中のウラン製造に関連して
 始まり、これを期にフッ素の化学が発展していきます。

  ウラン235を分離するために、六フッ化ウラン(UF6)が大量に
 必要となったことがそのきっかけです。

  六フッ化ウランは、容易に昇華させることのできるウラン化合物で、
 質量の差による気体分子運動の違いからウラン235のみを選り分ける
 ことができます(これがガス拡散法によるウラン濃縮です)。

  ※六フッ化ウランを高速度遠心分離法で濃縮する方法も行われており、
   現在はほとんどがこの方法で行われています。
   また、ウラン235は天然ウラン中に0.7%しか含まれていない
   ため、ガス拡散法や遠心分離法などの濃縮によって濃度を上げるこ
   とで、原子力発電用の燃料(核燃料)として使用可能となります。

  そしてフッ素ガスの大量製造に伴い、輸送方法や取扱方法が工夫され、
 フッ素の応用範囲が広がっていくことになります。


 フッ化水素とフッ化水素酸(HF)
 ─────────────────

  フッ化水素は、フッ素を水と直接反応させると(激しい反応をともな
 って)生成します。

  またフッ化水素酸は、フッ化水素の水溶液です。反応性の高い酸で、
 ガラスを腐食する性質があります(従ってガラス瓶には入れられないた
 め、ポリエチレンの容器で保存します)。

  なお、フッ化水素酸は皮膚につくと激しい痛みを伴うので取扱いには
 十分に注意して下さい。


 フッ素原子を含む化合物の用途
 ───────────────

  フッ素原子は、有機化合物を構成する原子の一部となることで、特異
 な性質を発現します。

  フッ化水素酸や単体のフッ素とは対照的に、有機化合物中の水素原子
 をフッ素原子に置き換えたものは極端に安定で、かつ無害なものが多い
 です。

  その高い安定性は、耐熱性、耐薬品性に優れる性質となって現れます。

  身近にある焦げ付きにくいフライパン、炊飯器釜の内面のコーティン
 グなどは、その表面にテトラフルオロエチレンの被膜(ポリテトラフル
 オロエチレン)をつけたものです。


  また歯磨きの中にフッ化物を添加しているものがあります。これは歯
 のエナメル質をフルオロアパタイト(フッ素リン灰石)に変化させるこ
 とで、虫歯菌がつくる酸への抵抗性を増すことをねらっているものです。
 (その効果によって虫歯になりにくくなるというわけです)。


 最も有名な有機フッ素化合物
 ───────────────

  有名な有機フッ素化合物として、フロン(クロロフルオロカーボン)
 があります。

  かつて、冷蔵庫、クーラーなどの冷媒、電子部品製造時の洗浄剤など
 の用途で多量に使用されていました。

  極度に安定で、なおかつ無害な化合物ということもあり、様々な産業
 でフロンが使われていたことは記憶に新しいことと思います。

  しかし、フロンがオゾン層を破壊する原因となることが判明して以来、
 世界中で製造や使用が規制されるようになりました。

  ※また、フロンには温室効果を持つものがあることもわかってきてい
   ます。



  従来は、使用時に安全で無害な化合物であればよいという考え方が主
 流でした。

  しかしフロンによるオゾン層破壊の問題によって、新しい化合物によ
 るの環境への影響についても、十分に考えていくことが必要となってき
 ています。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
        〜 アーネスト・ソルヴェー 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、アンモニアソーダ法で有名な、ソルヴェーを取り上げます。
  また、アンモニアソーダ法(ソルヴェー法)についても見ていきます。



  ソルヴェーは、1838年にベルギーのブリュッセル近郊のレベック
 で生まれました。

  生まれつき体が弱かったため、正規の教育はほとんど受けられず、独
 学でいろいろなことを学んでいったようです。


  父親が製塩工場を営んでいたことから、10代の終わりまで父の帳簿
 係として働きます。
  そして余暇には家の小さな実験室で実験をしていました。


  1860年になると、叔父のガス工場で働きながらアンモニアを工業
 的に扱う方法を学びます(これが後のアンモニアソーダ法の確立に大き
 な役割を果たすこととなります)。

  そんななかでソルヴェーは、食塩とアンモニアの溶液を混合して二酸
 化炭素を通すと白い沈殿(炭酸水素ナトリウム)を生じることに注目し
 ます。

  すぐにこの反応を基にした炭酸ナトリウムの製造方法について、ベル
 ギーで特許を取得しました。

  そして、その方法で実際に小規模な試験生産を実施するのですが、う
 まくいかない日々が続きます。


  結論から言うと、この方法は化学的には正しかったのですが、製造方
 法において何らかの工夫が必要でした(19世紀初めには、この問題で
 何人もの工業化学者が困難にぶつかり、乗り越えられずにいました)。

  その後2年間研究を行うと同時に設備投資のための資金調達も行って、
 ベルギーのクーイエに大規模な工場を建設します。
  そして1863年に製造を開始しました。

  1866年になると生産が軌道に乗るようになり、1873年には第
 2工場を建設するまでになりました。


  ソルヴェーの成功の鍵は炭酸化塔(ソルヴェー塔)にあります。

  これは上から飽和食塩水のアンモニア溶液を流し、下から二酸化炭素
 を吹き込むことで炭酸水素ナトリウムが得られるように工夫された反応
 塔です。

  この塔によって工程の連続化が可能となったため、回収した原料を再
 使用できる製造方法が確立しました。


  ソルヴェーのアンモニアソーダ法は、10年あまりで従来の炭酸ソー
 ダ製造法であったルブラン法(※1)に取って代わり、1900年頃ま
 でには世界中に普及することになります。



  さてここで、アンモニアソーダ法(※2)について見ておきます。

  簡単に言うと、塩化ナトリウム(食塩)と炭酸カルシウム(石灰石)、
 およびアンモニアを使用して、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)(※3)を
 製造する方法です。

  なお、アンモニアは回収して再利用するため、理論上は消費されませ
 ん。

  当時はアンモニアが比較的高価だったこともあり、再利用できるのは
 この方法の大きな利点でした。

  また、エネルギー的にも効率がよく、不要な廃棄物を出さない製造方
 法であったこともあり、短期間のうちに広まっていきました(もちろん
 従来よりも大幅に安く製造できたことも大きかったはずです)。


  生成物である炭酸ナトリウムはガラスや石鹸の原料として、また当時
 盛んだった紡績工業において使用され、当時の様々な産業を支えるもの
 となりました。



  化学者である一方で、ソルヴェーは実業家としての才能も持ち合わせ
 ていました。

  事業組合を組織してアンモニアソーダ法から得られる利益を最大限に
 確保するため、あらゆる方策を実行していきます。

  その結果、炭酸ナトリウムの製造において、ほぼ独占的な地位を得る
 ことに成功しました。


  巨富を得たソルヴェーは後に政界入りし、上院議員や国務大臣などを
 歴任します。

  同時に多くの教育機関に多額の寄付も行いました。


  また彼は、化学、物理、社会学などに関するソルヴェー研究所を設立
 しました。

  この研究所主催のソルヴェー会議(※4)には、世界各国の著名な科
 学者が参加し、基礎科学の発展に大きな役割を果たすこととなります。



  ソルヴェーによって開発されたアンモニアソーダ法は、その後改良さ
 れてはいますが、現在においても工業的製法の主流となっており、無機
 化学工業を支える重要な一翼を担っています。



 ◎ 用語紹介と補足

  ※1 ルブラン法
    アンモニアソーダ法が普及するまでは、主にこの方法で炭酸ナト
    リウムが製造されていた。

    1)食塩に硫酸を加えて加熱し、硫酸ナトリウムを得る。
     (副生成物として塩化水素ガスが発生する)。
      2NaCl + H2SO4 → Na2SO4 + 2HCl↑

    2)得られた硫酸ナトリウムに炭素と炭酸カルシウムを加えて
     加熱することで炭酸ナトリウムが得られる。
      Na2SO4 + 2C + CaCO3
             → Na2CO3 + CaS + 2CO2

    1)の工程で有害な塩化水素ガスが発生することと、エネルギー
    を大量に必要とする方法であったことなどから、アンモニアソー
    ダ法に取って代わられることとなる。

  ※2 アンモニアソーダ法(ソルヴェー法)
    ◇ここではこの製造方法についてもう少し詳細に見ていきます。

    1)炭酸カルシウム(石灰石)を加熱し、酸化カルシウム(石灰)
     と二酸化炭素を発生させる(後の工程で二酸化炭素を使用する
     ため)。
      CaCO3 → CaO + CO2

    2)アンモニアを飽和食塩水に溶解させる。

    3)2)の溶液に1)で得られる二酸化炭素を通すことで、塩化
     アンモニウムと炭酸水素ナトリウムが生成する(炭酸塔での反
     応)。
      NaCl + NH3 + CO2 + H2O 
                 → NH4Cl + NaHCO3

    4)3)で得られた炭酸水素ナトリウムを取り出し、加熱するこ
     とで主生成物としての炭酸ナトリウムを得る(発生する二酸化
     炭素は3)で再使用する)。
      2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2

    5)1)で得られた酸化カルシウムを水酸化カルシウムに変え、
     3)のろ液と反応させるとアンモニアが回収される。同時に副
     生成物として塩化カルシウムが得られる。
      CaO + H2O → Ca(OH)2
      Ca(OH)2 + 2NH4Cl 
             → 2NH3 + 2H2O + CaCl2

     ※現在は塩化アンモニウムを炭酸ナトリウムと同時に製造する
      改良法(塩安併産法)も行われている。

    なお、副生成物の主な用途としては、
     ・塩化カルシウム:凍結防止剤、乾燥剤
     ・塩化アンモニウム(塩安):肥料の原料
    などがある。

  ※3 ソーダ(ソーダ灰)
    通常は、炭酸ナトリウムを指す。
    18世紀になって石鹸、ガラス、紡績工業が発達すると従来使用
    されていた天然ソーダや海藻灰の抽出物などだけでは必要量をま
    かなえないようになる。
    現在もガラスや石鹸の原料として使用されている。

  ※4 ソルヴェー会議
    1911年より開催されている国際会議。
    第2次世界大戦での中断もあったが、現在も3年おきに開催され
    ている。
    ソルヴェーが資金を提供し、各国の著名な物理学者を集めて物理
    学の基本的問題を話し合う場として設定された。
    第5回ソルヴェー会議での量子力学に関する論争が有名。


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  3.あとがき
 ────────────────────────────────

  高校のとき、私は物理が苦手でした。
  その一方で、大学の教養課程で学んだ物理は、わかりやすくて楽しか
 ったことを憶えています。

  この差について考えてみると、高校のときは「なぜそうなるのか」と
 いうことが理解できていなかったということに気付きました。

  高校の物理と大学での物理の大きな違いは、大学では微積分を使って
 考えますが、高校では微積分なしで考えなくてはいけない点です。

  そのため高校の物理では、「なぜそうなるのか」という過程の部分が
 省略されてしまう傾向にあります。

  しかし大学での物理は、現象から数式へきちんと導く過程で微積分を
 使って進めていきますので、逆に「なぜそうなるのか」という部分がわ
 かりやすくなります。

  本来、物理と微積分は密接な関係にあるので、微積分なしで考える高
 校の物理は多少無理があると言えなくもありませんが、カリキュラムの
 関係でそれを変えていくのは難しいのかもしれません。


  さて、そのようななかで、予備校講師であり「物理Web講座」を開
 催している田原さんが、本を出されています。

 タイトルは、
   『図解入門 微積で楽しく高校物理がわかる本』(秀和システム)
 です。

  まさに、微積分を使ってわかりやすく高校物理を解説してくれている
 本です。

   ※内容について知りたい方は、田原さんのホームページ内の以下の
    リンクを参照してみてください。
   ⇒ http://www.webkouza.com/2006/04/post_73.html

    また、物理の棚があるような比較的大きな書店にはたいてい置い
    てあるようですので、手にとって確認されるのもよいと思います。


  さらに、この本をテキストとして使う講座もホームページ上で開講さ
 れていて、理解を深めることができるようになっています。

   田原さんの「物理Web講座」
   ⇒ http://www.webkouza.com/


  私が高校生のときにこの本があったら、物理を得意科目にして、今と
 は違った進路に進んでいたかもしれません。

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  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
                     風変わりなヒント ◇◇
  ・発行者 後藤 幹裕
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