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化学なんて大嫌い!という人のための
風変わりなヒント 第31号
2008年9月30日発行
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<目次>
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1.一風変わった化学の授業
〜 タングステンについて 〜
2.化学をつくった人たち
〜 フリッツ・ハーバー 〜
3.あとがき
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1.一風変わった化学の授業
〜 タングステンについて 〜
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今回はタングステンについてです。
普段の生活ではなかなか聞き慣れない元素ですが、目に見えないとこ
ろで使われている元素です。
タングステンの概要
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元素名のタングステンは、スウェーデン語の「重い石(tung sten)」に
由来しています。
その一方で元素記号の方はラテン語の「wolframium」(鉄マンガン重
石(wolframite)がもとになったもの)からきています。
なお、英語、フランス語では「タングステン」、ドイツ語、イタリア
語、スペイン語では「ウォルフラム」の方が用いられているようです。
タングステンの発見は、1781年にスウェーデンのシェーレが「重
い石」の分析を行い、白色の酸化物で酸としての性質を示す新しい物質
を単離したことによります。
彼はこの物質に対してタングステンの名前を付けました。
実際に単離されたのはその2年後であり、エルイヤール兄弟が、タン
グステンを含む酸化物を炭素とともに加熱還元することで、単体の金属
を得ることに成功しました。
タングステンの性質と用途
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タングステンは光沢のある銀白色の金属です。
金属タングステンは、現在では鉄マンガン重石や灰重石から酸化タン
グステンを得た後、水素で還元することにより得られています。
金属中で最高の融点(約3400℃)を有することが特徴で、高温で
も高い強度を保ち、細い線に加工することができます。
また、金属中で最小の蒸気圧であり、非常に高い沸点(約5700℃)
を有することも特徴的です。
そしてこれらの性質を利用し、白熱電球のフィラメントに使われてい
るのが有名です。
なお、純粋な金属タングステンは、アーク溶接用電極や、高温加熱用
の炉の発熱部分に耐熱用材料としても使われています。
タングステンは、鋼の添加元素としても特徴的な性質を有しています。
鉄鋼にタングステンを加えることで著しく強度が増すことが知られてい
ます。
タングステンが含まれた鋼は、焼き入れによる硬さが大きくなり、耐
摩耗性が非常に高くなります。
そのため刃物や、銃身や大砲の材料などにも用いられます。
さらに高速度鋼と呼ばれる、工具をつくるために用いる特殊鋼にも使
用されていて、これにはタングステンが12%以上含まれています。
高温になっても硬さが変わらないのが特徴です。
また、炭素との化合物である炭化タングステン(WC)はさらに硬い
材料のため、切削工具(機械工作用工具)に利用されています。
化合物としての利用では、石油精製処理において触媒として使用され
ている酸化タングステンが挙げられます。
その他として
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定義が確立しているものではありませんが、タングステンはいわゆる
「レアメタル」のひとつに数えられています。
ちなみに日本で使われているタングステンは、供給量の約8割が中国
からのものです。
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2.化学をつくった人たち
〜 フリッツ・ハーバー 〜
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今回はドイツの化学者、ハーバーを取り上げます。
アンモニア合成法であるハーバー・ボッシュ法で知られる化学者です。
ハーバーは、1868年にブレスラウ(現在はポーランド領)で生ま
れました。父親はユダヤ人で、薬品や染料を扱う裕福な商人でした。
ギムナジウムで文学や哲学に親しんだ後、家業を継ぐためもあって、
ベルリン大学、ハイデルベルク大学、シャルロッテンブルク大学などで
学びます。
ただ、家業を手伝った際に父親と意見が合わなかったことから、研究
の道に進むことになりました。
26歳でカールスルーエ工科大学で助手となり、その後1906年に
カールスルーエ大学の物理化学教授に就任します。
その後、1911年にベルリン大学教授となり、ほどなく新設された
カイザー・ウィルヘルム研究所(物理化学研究所および電気化学研究所)
の所長となりました。
ハーバーというと、アンモニア合成の研究が真っ先に思い浮かびます
が、その研究の前に、炎中における平衡化学の研究、ニトロベンゼンの
電解還元によるアニリン合成、アーク中における硝酸の合成研究などの、
物理化学および電気化学に関する優れた研究を数多く行っています。
※そしてこれらの研究が、直接的および間接的にアンモニア合成研究
の役に立っていったものと思われます。
さてその当時、窒素化合物の供給源としては、南米チリで主に産出さ
れる「チリ硝石」が使われていました。
用途としては肥料や、爆薬など多岐にわたっていましたが、産地が限
定されていることに加え、需要の急激な高まりから、20世紀初めには
枯渇の懸念が叫ばれるようになっていました。
そのような中でハーバーは、気体反応の研究からアンモニア合成の研
究を開始します。
まずそれまでの熱力学に関する知識と経験を使い、窒素と水素からア
ンモニアを生成する反応の平衡定数を測定しました。
最初は鉄を触媒として、常圧で約1000℃の条件で、まだ低い濃度
ながらもアンモニアを得ることに成功します。
しかしながらそれは当時の誰よりも高い収率でアンモニアを得る方法
であり、彼は自信を深めていきました。
その後、触媒を改良しながら、理論式とそれまでに得られたデータを
使うことで、600℃、200気圧にて高収率でアンモニアが得られる
ことがわかり、工業的に目処がつく段階に到達します。
そしてこの技術に目をつけたドイツのBASF社により、ボッシュを
はじめとするチームが編成されて、実際の工業化に成功することとなり
ました。
このようにして得られたアンモニアは肥料などの用途に使えるほか、
オストワルト法によって硝酸とし、様々な窒素化合物の原料とすること
が可能です。
また、現在ではこの方法には多くの改良法が存在しますが、基本的な
ところはほとんど同じと言えます。
※触媒には鉄系触媒を用い、酸化アルミニウム(アルミナ)などを助
触媒とするものがほとんどです。
ハーバー・ボッシュ法(アンモニア合成法※1)は、今日では世界中
に肥料を提供する基盤技術となっており、20世紀における最も重要な
化学的進歩のひとつと言えます。
そしてハーバーは、1918年にこの業績でノーベル化学賞を受賞し
ました。
○ 簡単な用語紹介と補足
※1 アンモニア合成法
アンモニアの反応は、
1/2 N2 + 3/2 H2 = NH3 + 11kcal
で示されるが、平衡理論から、反応温度が低く、圧力が高いほどア
ンモニア生成率は高くなる。
しかし温度を下げると反応速度が遅くなる(活性化エネルギーを超
えるものが少なくなる)ため、工業的に高収率を得るためには、適
当な温度と圧力の選択が重要となる。
また同時に、活性化エネルギーを下げるための触媒の選択も重要な
要素である。
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3.あとがき
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最近のいろいろな人との出会いに本当に感謝しているところです。
すばらしい人から学ぶことは、本などで学ぶことよりも多いことに改
めて気付かされたところです。
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