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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第33号(2009.9.30発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第33号
                  2009年9月30日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
     〜 リチウムについて

 2.化学をつくった人たち
    〜 フレデリック・サンガー

 3.あとがき
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  1.一風変わった化学の授業
          〜 リチウムについて 〜
 ────────────────────────────────

  今回はリチウムを取り上げます。
  最近の話題のなかで、リチウム電池に関わる事柄を耳にしたこともあ
 るかもしれません。



 リチウムの概要と性質
 ───────────

  リチウムは、1817年にスウェーデンの化学者アルフヴェドソンに
 よって発見されました。

  彼は鉱物のひとつである葉長石から分離して発見しましたが、後に他
 の鉱物中にも幅広く含まれてることが確認されました。
  ※リチウムという名前は、ギリシア語の「石」にちなんで命名された
   ものです。


  リチウムは銀白色の軟らかい金属で、ナトリウムと同じアルカリ金属
 に分類されます。

  ただし化学的性質としては、マグネシウムやカルシウムに似ていると
 ころもあります。

  炎の中に入れる(炎色反応)ときれいな赤色(深紅色)を発すること
 で知られています。


  金属リチウムは、水と激しく反応して水素を生成します。
  また大気中の窒素とも反応して窒化物(窒化リチウム:黒色)となり
 ます。
  ※そのため保存はワセリンなどで表面を覆う方法で行います。


  リチウムは全ての金属の中で最も軽い金属であり、密度は
 0.534g/cm2 です。

  単体は、塩化リチウムと塩化カリウムの混合塩を450℃に加熱して
 溶融させてから電気分解することで得られます。



 リチウムの用途
 ────────

  まず各種合金への添加元素としての用途があります。

  アルミニウムやマグネシウムなどと合金にすることで、密度を減らし
 ながら強度を向上させることができますので、航空機の材料などに用い
 ることができます。

  純金属の状態では、中性子を吸着するので、原子炉の制御棒にも使用
 されます。


  ステアリン酸リチウムの形で潤滑用グリース向けとして配合され、高
 度な耐水性を持つことから自動車用途などに使われています。

  水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)は強力な還元剤として、
 実験室での有機合成用試薬としては有名です。


  炭酸リチウムはガラスやセラミックスの原料として使用されています。
 添加することで急激な温度変化にも対応可能な製品が得られます。

  なお炭酸リチウムには、顕著な抗うつ病効果が認められていますが、
 適度な血中濃度になるように調整が必要なため、摂取には十分な注意が
 求められます。


  水素との化合物である水素化リチウム(白色粉末)は水と反応させる
 と水素を放出するため、水素貯蔵用材料として有用と思われます。



 リチウムを使った電池について
 ───────────────

 1)リチウム一次電池(充電できない電池)

  金属リチウムを負極側に使っているタイプの電池です。

  円筒形のものやボタン型(コイン型)などの様々な形状のものがあり、
 小型電池として、ガスや水道のメーターなど(円筒形)、電卓や腕時計
 など(ボタン型)に使われています。

  特徴としては、小型軽量で長寿命であり、信頼性も高く、使用可能な
 温度範囲が広いことが挙げられます。


 2)リチウム二次電池(充電可能な電池)

  リチウムを電池に用いれば高性能の二次電池を作れることは、かなり
 以前からわかっていましたが、電池の充電と放電を繰り返すとリチウム
 金属が樹脂状に析出して不安定となってしまうため、課題となっていま
 した。

  いろいろな検討の結果、負極に炭素(コークス)、正極にリチウム化
 合物のLiCoO2、電解液に有機電解液を用いることで、問題が解決し
 実用化されました。
  ※現在もさらなる高性能化に向けての検討が行われています。

  携帯電話、ノートパソコンや、一部の電気自動車など、多くの用途に
 使用され、急速に普及している電池です。


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  2.化学をつくった人たち
         〜 フレデリック・サンガー 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、イギリスの生化学者であるサンガーを取り上げます。
  タンパク質およびDNAの研究において、多大な功績を残した人です。



  サンガーは1918年に医者の息子として、イギリスのグロスターシ
 ャー州レンコムという所で生まれました。

  ケンブリッジ大学に進み、1939年に卒業してから生化学の研究
 (タンパク質化学の研究)を開始します。

  1943年に博士号を取得した後、1951年まで特別研究員として
 研究を続けました。

  医学研究機構に所属し、1961年にはケンブリッジ大学キャベンデ
 ィッシュ研究所内の分子生物学研究施設(分子生物学研究所の前身)で
 タンパク質化学部長に就任しました。



  1943年以降、サンガーは、ウシの膵臓から得られたインシュリン
 分子(51個のアミノ酸から構成されている)のアミノ酸配列を決定す
 る研究を行っていました。

  彼は1945年までに、ジニトロフェニル法(※1)を開発し、19
 49年には、インシュリンが2本のポリペプチドからできていることを
 初めて明らかにします。

  1953年までには、インシュリンのアミノ酸配列(一次構造)を決
 定し、他の動物から得られたインシュリンとの比較も行いました。

  また同時に、様々な酵素のアミノ酸配列を決定し、その構造を解明し
 ていきます。

  そして、この功績により、1958年度のノーベル化学賞を受賞しま
 した。



  1950年代の終わり頃からはDNAに関心を示し、そのヌクレオチ
 ドの配列を決定する研究を行います。

  その過程で、DNA塩基配列決定のためのチェインターミネーター法
 (※2)を開発しました。

  1977年には、この方法を用いてある種のファージ(※3)の
 約5300塩基にのぼるヌクレオチド配列を決定します。

  その後、ミトコンドリアのDNA配列(約1万7千のヌクレオチドを
 有するもの)も解明しました。


  これらの功績が認められ、1980年に2回目のノーベル化学賞を受
 賞します。
  ※サンガーは、ノーベル賞を2度受賞した数少ない人物のひとりです。


  なお、彼が開発したチェインターミネーター法は、現在も改良を重ね
 られながら広く用いられています。


  タンパク質および、遺伝子の構造を解明する方法を開発したサンガー
 は、分子生物学の発展に多いに貢献した人と言えます。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※1 ジニトロフェニル法(DNP法)

   サンガー法とも呼ばれる。
   タンパク質やペプチドのアミノ末端(N-末端)アミノ酸を決定する
   分析方法。
   分析したい試料をジニトロフェニル誘導体とした後、加水分解して
   得られる遊離アミノ酸誘導体を分析することで、N-末端アミノ酸
   の種類がわかる。
   その後は、これを繰り返し行うことで、タンパク質やペプチドのア
   ミノ酸配列(どの種類のアミノ酸がどういった順番でつながってい
   るか)を決定することができる。


  ※2 チェインターミネーター法

   DNAやRNAを構成する塩基の配列を決定する方法のひとつ。
   試料DNA(RNA)に相補的なDNA(RNA)を合成する際に、
   通常の4種類の塩基に加えて、それらに対応する塩基で、通常のも
   のとは微妙に構造の異なる塩基と、さらに放射性同位体で標識した
   塩基を加えておく。
   これらを用いて相補的なDNA(RNA)を合成すると、長さの異
   なる相補的なDNA(RNA)配列が得られるので、それらを電気
   泳動で分離して塩基配列を同定する。


  ※3 ファージ(バクテリオファージ)

   細菌を宿主として増殖するウィルス。粒子内遺伝子のタイプの違い
   によってDNAファージとRNAファージに分けられる。


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  3.あとがき
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  企業としても利益追求だけでなく、環境にやさしい商品を出さなけれ
 ば生き残れない時代になってきています。

  見えないところで様々な会社が努力していますので、それを調べてみ
 るのも面白いかもしれませんね。


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  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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