メールマガジン
化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
ホーム ≫ メールマガジン ≫ バックナンバー ≫ 第35号


ホーム

メールマガジン

 ・バックナンバー

  →第35号

 ・参考文献

化学の参考書

おすすめの本

リンク

お問い合わせ



 第35号(2010.9.30発行)



 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 ○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o

   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第35号
                  2010年9月30日発行

 ○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o
 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 <目次>
 -------------------------------------------
 1.一風変わった化学の授業
     〜 コバルトについて

 2.化学をつくった人たち
    〜 ハロルド・C・ユーリー

 3.あとがき
 -------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 コバルトについて 〜
 ────────────────────────────────

  今回はコバルトを取り上げます。
  鮮やかな青い顔料のコバルトブルーでも有名ですが、体に必要な、あ
 る意外なものにもコバルトが含まれています。



 コバルトの概要と性質
 ───────────

  1735年に、美しく青い鉱石を研究していたスウェーデン人の化学
 者ブラントによって、コバルトは発見されました。

  そして1780年に、ベルグマンが新元素であることを確認していま
 す。

  元素名の由来ははっきりしていないものの、ドイツの民話にでてくる
 山の精/悪霊のコボルト(kobold)に由来している(※1)といわれて
 います。


  コバルトはニッケルと共存することが多く、ニッケルおよび銅や亜鉛
 の生産からの副産物として得られます。

  主な産出地としてはアフリカ(ザイール、モロッコなど)が挙げられ
 ます。


  コバルトは、鉄に似て銀白色の光沢のある金属で、粘性や硬さ、剛性
 は鉄より大きく、強磁性を持っています。

  空気中、常温では安定ですが、加熱すると酸化されて四三酸化コバル
 ト(Co3O4)になり、高温では酸化第一コバルト(CoO)が生成し
 ます。
  なお、水素、窒素とは反応しません。


 (※1)元素名の由来について
  16世紀、ドイツのザクセン地方の鉱夫たちが銀鉱石によく似た鉱石
  から銀を取り出そうとしたが、毒性の強い蒸気(ヒ素)が発生するば
  かりで銀が得られないことに失望し、民話に出てくる意地悪なコボル
  トの仕業だと考え、その鉱石をコボルトと呼んでいた。後にその鉱石
  から美しい青色を出す元素が見つけられてコバルトと呼ばれるように
  なったと言われている。



 コバルトの用途
 ────────

  コバルトが金属として利用されるようになったのは20世紀になって
 からですが、古代からガラスや陶器への着色にはコバルトの酸化物が用
 いられていました。

  現在は、純金属としての用途は少ないものの、合金としては広く用い
 られています。

  コバルトの合金は高温でも耐摩耗性と耐腐食性が高いので、ジェット
 エンジン、ガスタービンなどに用いられます。

  またコバルト、クロム、タングステンなどを含む合金は、非常に硬く
 て丈夫なので、切削道具や硬質仕上げ面に利用されています。

  さらに、コバルトの強磁性を利用して磁石の材料としても使用されて
 います。
  ※実用的な磁石鋼には35%程度のコバルトが含まれています。



  3価のコバルト錯体は、その組成によって様々な色を呈色するため、
 色素としても用いられています。

  ※コバルト錯体は、その多様性と色の華麗さから、多くの化学者の
   興味を惹いた化合物でもあります。

  (ちなみに錯体というのは、特定の金属原子などを中心にして、い
  くつかのイオンや原子団などが立体的に配置されてできる原子集団
  のことです)。


  コバルトの塩化物は青色ですが、水の存在の有無によって色が変化
 (水を吸収するとピンク色に変化)するため、この性質を用いてシリ
 カゲル乾燥剤の吸湿状態を示す用途でも用いられています。


  コバルト顔料としては、絵の具や陶磁器、合成樹脂の着色材料など
 に用いられるコバルトブルーが有名ですが、コバルトイエロー、コバ
 ルトグリーンなどの青以外の色の顔料もあります。



  放射性同位体である質量数60のコバルトは半減期が約5.3年
 (1920日)と比較的長く、安価なガンマ線源として、医療分野な
 どで利用されています。



 ビタミンB12とコバルト
 ────────────

  ビタミンB12(シアノコバラミン)は、唯一の生化学的に重要な
 コバルト含有化合物です。

  このビタミンB12は複雑な構造を有する化合物で、1948年にア
 メリカのリックスによって発見され、1972年にアメリカのウッド
 ワードらがその全合成を行っています。
  ※ビタミンの中で唯一重金属を含む化合物でもあります。

  このビタミンが欠乏すると、赤血球を十分に生産できなくなります。
 また、神経組織を健康に保ち、糖や脂質からエネルギーを得るのにも
 このビタミンが役立っています。

  また、ビタミンB12を比較的豊富に含んでいる食品としては、いわ
 し、鮭、貝類、レバー、卵などがあります。


  なお、ヒトの体内には1〜2mgのビタミンB12が蓄えられていて、
 かなり長い間にわたって必要量を補うことができるので、ビタミンB12
 欠乏症についてはそれほど心配しなくてよいようです。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
       〜 ハロルド・C・ユーリー 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、アメリカの化学者、ユーリーを取り上げます。
  重水と重水素の発見や同位体の研究で功績のあった人です。


  ユーリーは、1893年にアメリカのインディアナ州ウォーカートン
 で生まれました。

  1911年に高校を卒業した後3年間教師として勤務し、その後モン
 タナ州立大学の動物学科に入学して3年で卒業します。

  なお大学在籍中の1918年から19年にかけて、フィラデルフィア
 にある化学会社で研究者として働いています。

  大学卒業後から1921年までモンタナ州立大学で講師を務め、その
 後カリフォルニア大学バークリー校へ入って物理化学や数理化学を学び、
 本格的に化学の道に進むことになりました。


  1923年に博士号を得た後、奨学金を得てコペンハーゲン大学にい
 たボーアのもとに留学し、帰国後は、5年ほどボルティモアにあるジョ
 ンズ・ホプキンス大学の研究員となります。

  1929年から34年までコロンビア大学で准教授、教授を歴任し、
 1939年から42年までは化学教室の主任を務めました。

  1945年にはシカゴ大学の原子核研究所の化学教授となり、195
 8年にカリフォルニア大学ラホヤ校の無任所化学教授、アメリカ科学ア
 カデミーの宇宙科学評議会の会員にもなりました。



  ユーリーは、1932年に重水を分離してそこに含まれる重水素を発
 見・確認しました。

  この重水と重水素の発見は化学だけでなく、物理学、生物学、医学に
 も著しい影響を与えるものとなります。
  この功績により彼は1934年にノーベル化学賞を受賞しました。


  また重水素だけでなく、炭素、窒素、酸素、硫黄などの重い同位体を
 分離しています。
  ※これらの一連の技術はトレーサー法などに活用されることで、生物
   学の分野での強力な手法となりました。

  なお彼の研究グループでは、第2次世界大戦中に、ウラン238とウ
 ラン235をフッ化ウランの形で分離するための情報も提供しています。



  戦後、ユーリーは地球の起源に関する研究テーマについても興味を持
 って研究していきました。
  同位体効果に基づく地球古代の温度予測に関する研究も行っています。


  地球の起源に関する研究テーマの中での有名な功績としては、水素、
 アンモニア、メタン、水蒸気、窒素、硫化水素から成る原始大気に放電
 を行う(原始地球の状態を再現する)ことで、生命の基本的な材料であ
 るアミノ酸やそのほかの化合物が得られることを確認したことが挙げら
 れます(1953年のミラーとの共同実験)。

  この実験結果は、オパーリンの主張する「化学的進化」を裏付ける実
 証的研究の先駆けとなりました。


  「鉱夫が採掘した鉄の用途についての責任の所在」というたとえ話を
 用いて、科学者としての社会的責任について述べているのが印象的な人
 です。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
 ────────────────────────────────

  今回のメルマガを書いていて、大学の教養課程の講義(化学ではなく
 地球科学の講義)で聞いたユーリー・ミラーの実験をなつかしく思い出
 しました。

  当時の私は、原始大気からアミノ酸などが生成することを聞いて、な
 んとも言えない不思議な気持ちになりましたが、生命の誕生について考
 えるきっかけとなる感慨深い講義でした。



----------------------------------------------------------------



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


 ────────────────────────────────
  クリックするだけで募金ができるサイトを紹介させてください。
  1クリックあたり1円を企業がクリックする人に代わって「熱帯雨林
 保全」や「難病のこども支援」などを行うNPO団体に募金してくれる
 サイトです。
  もしよかったらこちらから訪問してみてください。
  (FLASHサイト)→ http://www.dff.jp/index.php
  (テキストサイト) → http://www.dff.jp/index_t.php
 ────────────────────────────────

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
                     風変わりなヒント ◇◇
  ・発行者 後藤 幹裕
  ・配信システム まぐまぐ( http://www.mag2.com/ )
  ・登録の解除は、 http://www.mag2.com/m/0000129929.htm
   からお願いします。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  よかったらあなたのお知り合いにぜひ転送してもらえればと思います。
  ただし転載を希望される場合は、ご一報ください。


 ←第34号へ

第36号へ→ 
バックナンバーの一覧へ


※ メルマガ作成時に使用した参考文献はこちらにまとめました。



ホームメールマガジン化学の参考書おすすめの本リンクお問い合わせブログ

このサイトへのリンクはご自由ににどうぞ。
ご意見、ご感想など頂ければとてもうれしいです。
ただし、サイトの内容を転載される場合はこちらまでご連絡ください。
Copyright(c) 2004-2013 化学を楽しくするヒント