メールマガジン
化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
ホーム ≫ メールマガジン ≫ バックナンバー ≫ 第37号


ホーム

メールマガジン

 ・バックナンバー

  →第37号

 ・参考文献

化学の参考書

おすすめの本

リンク

お問い合わせ



 第37号(2011.9.27発行)



 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 ○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o

   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第37号
                  2011年9月27日発行

 ○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o。○o
 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 <目次>
 -------------------------------------------
 1.一風変わった化学の授業
       〜 セシウムについて

 2.化学をつくった人たち
       〜 マリー・キュリー

 3.あとがき
 -------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
        〜 セシウムについて 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、セシウムを取り上げます。

  放射性同位体である質量数137のセシウムが有名になっていますが、
  安定同位体である質量数133のセシウムも、目に見えないところで
 役立っています。



 セシウムの性質と概要
 ───────────

  セシウムは1860年にブンゼンとキルヒホッフにより発見されまし
 た。
  分光器を用いて発見された最初の元素になります。

  得られたスペクトル線が青色だったことから、ラテン語の「青空」と
 いう言葉(caesius)にちなんで、セシウムと名付けられました。

  地殻には3ppm程度含まれていますが、多い方から数えて46番目で
 あり、それほど含有量の多い元素ではありません。


  セシウムはアルカリ金属のひとつで、融点が28℃程度とかなり低め
 です。

  全元素中で、イオン化エネルギーや電子親和力が最も小さいのが特徴
 です。
  ※イオン化エネルギーや電子親和力が最も小さい = 最も電子を放出
しやすい性質を持つ、ということになります。


  カリウムとイオン半径が近いので、一部のカリウムと置換される場合
 がありますが、通常の野菜や果物には3ppb程度とごく少量しか含まれて
 いません。

  特に生物学的な役割はないと考えられていて、体内で蓄積されること
 もないと言われています。



 セシウムの製法と用途
 ───────────

  工業的にはリチウムの副産物として得られることが多いです。

  セシウムの単体を得るためには、塩化セシウムを高温で溶融してカル
 シウムで還元する方法を用います。


  セシウムの用途としては、他の金属酸化物触媒の機能を著しく向上さ
 せる(プロモータ)としての用途があります。

  また、光が当たると電子を放出しやすい性質を利用して(銀やアンチ
 モンなどとの合金として)光電管の材料に使われます。

  ヨウ化セシウムは質量分析計の校正用標準物質、赤外スペクトルのプ
 リズム等に用いられ、硝酸セシウムは光学ガラスの材料として使用され
 ます。



 セシウムの放射性同位体
 ────────────

  セシウムの安定同位体として自然に存在するのは、質量数133の1
 種類のみです。

  放射性同位体としては、質量数125から140までの様々なものが
 ありますが、半減期の長い質量数134および質量数137のものが特
 に注目されます。

  その中でも質量数137のセシウムは代表的な核分裂生成物で、半減
 期も約30年と、かなり長いため、放射能汚染の際には問題となる核種
 です。



 その他のトピックス
 ──────────

  現在は、時間の精密測定に欠かせないセシウム原子時計ですが、質量
 数133のセシウムの2つのエネルギー状態間の遷移(この周波数が
 9192MHz)を利用していて、誤差は30万年に1秒以内という精
 度を実現しています。

  ちなみに電波時計の基準となる標準電波を発信している場所としては、
 (日本では)福島県と佐賀県に標準電波送信所があります。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
        〜 マリー・キュリー 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、マリー・キュリーを取り上げます。
  放射性元素のラジウムとポロニウムを発見し、2度のノーベル賞を受
 賞した女性化学者です。



  マリー・キュリー(結婚前のポーランド名は、マリア・スクロドフス
 カ)は、1867年にポーランドのワルシャワで生まれました。
  ※ただし、当時のポーランドはロシアの統治下にありました。

  地元の高等学校で優秀な成績を修めましたが、両親の経済状況があま
 りよくなかったため、それ以上の教育を受けられませんでした。

  そのため、住み込みの家庭教師となって家計を助けます。


  24歳のときに姉を頼ってパリに行き、ソルボンヌ大学(パリ大学理
 学部)に入学して物理と数学を学び主席で卒業しました。
  その後は、大学に残って研究を続けていきます。

  1894年には、物理学者であるピエール・キュリーと出会い、結婚
 しました。

  そして1896年から夫婦共同で放射性物質の研究を開始し、189
 8年にポロニウムとラジウムを発見します。

  この業績が認められて、1903年にマリーとピエール、および放射
 能を発見したベクレルの3人でノーベル物理学賞を受賞しました。

  1906年にピエールが交通事故で亡くなったあとは、マリーがその
 地位を引き継いで、ソルボンヌ大学で初の女性教授となりました。



  マリーは研究を行っていく中で、ウランやトリウムを含む鉱石が、そ
 れらの含有量をもとに計算されるよりも、はるかに強い放射能を出して
 いることに気付きます。

  そこでこれら鉱石の中には、ウランやトリウムとは異なる放射能の強
 い元素が存在するのではないかと考えて研究を開始しました。

  ※マリーが対象として選んだ鉱石がピッチブレンド(閃ウラン鉱)と
   呼ばれるものです。


  この鉱石を化学分析の手法を用いて各成分に分けていったところ、ビ
 スマスと一緒に得られる成分の中から新元素を発見することができまし
 た。

  最初に発見したこの元素には、祖国ポーランドにちなんでポロニウム
 と命名します。



  それと同時に、バリウムと一緒に得られる成分から新しいスペクトル
 を持つ新物質を分離し、もうひとつの新たな元素の発見を行いました。

  この新物質は塩化ラジウムであり、元素の名前は、ラテン語の「放射
 (radius)」にちなんでラジウムと命名されました。


  その後、それまでに得られた塩化ラジウムを電気分解して金属ラジウ
 ムを単離し、ラジウムの原子量を求めました。

  この業績により、1911年度のノーベル化学賞を受賞することとな
 りました。


  またこれらの一連の研究の過程で、自然に放射線を放出するものがウ
 ランだけではないことがわかったため、一般的な概念としての「放射能」
 という言葉を提唱しました。



  新元素ポロニウムとラジウムの発見は、非常に地道で労力の必要な作
 業の連続だったと言われています。

  8tのピッチブレンドから得られた塩化ラジウムの量がたった1gで
 あったことがそれを物語っています。



  マリーは試料を素手で扱っていたため、手に放射能による火傷を負い、
 同時に体重が10kgも減少するという代償も支払っています(当然の
 ことながら、放射線による多量の被曝も受けていたはずです)。


  第一次世界大戦中には、長女のイレーヌとともに前線にX線装置を持
 ち込み、X線透過治療による救護活動に従事するということも行ってい
 ます。

  ちなみにイレーヌは、人工放射能の発見で、夫ジョリオとともに19
 35年度のノーベル化学賞を受賞しており、親子2代にわたるノーベル
 賞受賞となりました。



  マリー(とピエール)の研究により、その後の放射能に関する研究は
 飛躍的に進み、放射線の正体や原子内部構造の解明につながっていくこ
 とになります。


  また、ラジウム精製に関する手順をすべて公開し、特許は取得しなか
 ったことから、一途に研究に没頭し、物質的な利益を求めようとはしな
 かったマリーの人柄が垣間見えます。


 ────────────────────────────────
  3.あとがき
 ────────────────────────────────

  今年(2011年)は、世界化学年です。

  マリー・キュリーがノーベル化学賞を受賞してから100年目にあた
 るということで決定されたと聞きました。

  これを機に、化学を好きになる人が少しでも増えるといいなあ、など
 と考えています。



----------------------------------------------------------------



  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


 ────────────────────────────────
  クリックするだけで募金ができるサイトを紹介させてください。
  1クリックあたり1円を企業がクリックする人に代わって「熱帯雨林
 保全」や「難病のこども支援」などを行うNPO団体に募金してくれる
 サイトです。
  もしよかったらこちらから訪問してみてください。
  (FLASHサイト)→ http://www.dff.jp/index.php
  (テキストサイト) → http://www.dff.jp/index_t.php
 ────────────────────────────────

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
                     風変わりなヒント ◇◇
  ・発行者 後藤 幹裕
  ・配信システム まぐまぐ( http://www.mag2.com/ )
  ・登録の解除は、 http://www.mag2.com/m/0000129929.htm
   からお願いします。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  よかったらあなたのお知り合いにぜひ転送してもらえればと思います。
  ただし転載を希望される場合は、ご一報ください。


 ←第36号へ

第38号へ→ 
バックナンバーの一覧へ


※ メルマガ作成時に使用した参考文献はこちらにまとめました。



ホームメールマガジン化学の参考書おすすめの本リンクお問い合わせブログ

このサイトへのリンクはご自由ににどうぞ。
ご意見、ご感想など頂ければとてもうれしいです。
ただし、サイトの内容を転載される場合はこちらまでご連絡ください。
Copyright(c) 2004-2013 化学を楽しくするヒント