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化学なんて大嫌い!という人のための
風変わりなヒント 第38号
2012年3月27日発行
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<目次>
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1.一風変わった化学の授業
〜 スズについて 〜
2.化学をつくった人たち
〜 オットー・ディールス と クルト・アルダー 〜
3.あとがき
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1.一風変わった化学の授業
〜 スズについて 〜
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今回はスズ(Sn)を取り上げます。
古くから知られ、用いられてきた金属のひとつです。
スズの性質と概要
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スズは青みがかった銀白色の金属光沢を有する軟らかい金属で、展性・
延性があり薄い箔にすることができます。
表面に酸化被膜が形成されるため、空気中や水中でも安定で、腐食し
にくい性質があります。
なお、スズは両性物質なので、強酸、強塩基の両方と反応することが
できます。
スズの元素記号であるSnはラテン語の"Stannum"という言葉にもとづ
いています。
※"Stannum"はもともと鉛と銀の合金を指す言葉でしたが、紀元後4世
紀頃からスズに対して用いられるようになったようです。
スズは地殻にはあまり多く存在しない元素で、主なスズ鉱物としては
スズ石(主成分がSnO2)が挙げられます。
世界の産出地としてはイギリスのコーンウオール地方が歴史的には有
名でしたが、現在はマレーシア、ボリビアなどが主要な産出地です。
純スズは寒冷な環境に長く置かれるとぼろぼろに劣化するという性質
(いわゆるスズペストと呼ばれる現象)があります。
これは結晶の変態によるもので、高温型のβスズ(白色スズ)が低温
型のαスズ(灰色スズ)に転移するためです。
※変態点は13℃ですが、低温状態でも高温型が過冷却のまま安定に
存在するので、実際には−30℃くらいに長期間置かれない限り変
態は起こらないと言われています。
※なおスズには、上記のαスズ、βスズのほかに、γスズ(161℃以上
〜232℃で存在[232℃はスズの融点])という同素体があります。
スズの製法と用途
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酸化スズは炭素によって還元することが可能で、これにより容易に金
属スズを得ることができたことから、古代(紀元前3000年ころ)からス
ズが使用されてきた経緯があります。
現在では反射炉で粉コークスや無煙炭粉を用いてスズ石を還元するこ
とにより金属スズを得た後、その純度を上げるために主に電解精錬法に
よって精錬されます。
スズの用途で多いものとしては、めっきと合金が挙げられます。
鉄板にスズをめっきすることで鉄を保護しているのがブリキであり、
主に缶詰の缶に用いられています。
※ブリキは金属のイオン化傾向の違いを利用している有名な一例です。
※18世紀の半ば頃までにはスズめっきは一般的となり、家庭用の調理
器具や食器のほとんどがスズめっきされるようになったようです。
合金には、銅に対してスズを5〜25%程度加えた青銅や、逆にスズ
をベースにして銅を12%程度加えたベアリングメタルがあります。
また鉛の組成比が40〜70%である「はんだ」も代表例のひとつと
言えます。
※なお、青銅器文明の時代において、スズの含有量の低い青銅は装身
具に、中間の含有量のものは剣や槍に、含有量の高いものは矢じり
や鏡に使用されていました。
※青銅においてはスズの量が多いほど硬さが増しますが、それと同時
にもろくなる傾向があります。
酸化スズ(IV)(SnO2)は空気中で安定で、一酸化炭素や硫化水素
などのガスセンサーとして優れた性質を示します。
※これは固体表面にガスが付着することで電気伝導度が変化すること
を利用しています。
また、SnO2は薄い場合には透明なので、ガラスにコーティングする
ことで伝導ガラスが得られます。
※用途としては飛行機の前方ガラスなどで、水蒸気が氷結して視界が
妨げられるような場所に使われます(電気を通すことで温めて氷結
を防ぐことができます)。
スズの同位体
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スズはすべての元素の中で最も多くの安定同位体をもつ元素です。
(合計10種類が存在します)。
この理由は、原子核中の陽子数がマジックナンバー(*)である50
のため、原子核が安定になるからと言われています。
(*)マジックナンバー
原子核をつくる核子(陽子と中性子)の数が特定の数になると、
その原子核が特に安定になることから、その数をマジックナンバー
と呼んでいます。
マジックナンバーとしては、2,8,20,28,50,82,
126が知られています(陽子の数としては82までです)。
その他のトピックス
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<有機スズ化合物>
フジツボやフナクイムシなどが船底へ付着するのを防ぐ目的で、以前
はトリブチルスズ等の有機スズ化合物を船底塗料や養殖網の防汚剤に使
用してきました。
しかしこの有機スズ化合物は有毒であり、海水に溶け出すことによっ
て、環境汚染の原因となっていることがわかり、使用が禁止されました。
※現在では、有機スズ化合物を用いないタイプの船底塗料や防汚剤が
開発されて使用されています。
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2.化学をつくった人たち
〜 オットー・ディールス と クルト・アルダー 〜
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今回は、ディールスとアルダーの二人の人物を取り上げます。
有機化学において有名な、ディールス・アルダー反応を確立した化学
者です。
オットー・ディールス
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ディールスは1876年にドイツのハンブルクで生まれました。
※家は学者の家系で、父はベルリン大学の古典哲学教授、二人の兄も
哲学と植物学の教授となりました。
早くから化学に興味を示し、兄と一緒に様々な実験を試みていたよう
です。
1895年にベルリン大学化学科に入学し、ドイツの偉大な有機化学
者であるエミール・フィッシャーに師事します。
1899年に博士号を取得した後、エミール・フィッシャーの助手と
して研究を続け、1904年に講師に昇進しました。
1914年に王立フリードリヒ・ヴィルヘルム大学化学科に教授とし
て移った後、その2年後にキール大学(クリスティアン・アルブレヒト
大学)に化学科主任教授として招かれます。
そしてここで32年間、退職するまで研究を続けました。
ディールスは、1906年にベルリン大学で研究をしていた頃に、マ
ロン酸の脱水によって二酸化三炭素(C3O2)を発見し、反応性が高い
物質であることを明らかにしました。
また、純粋なコレステロールを単離し、それをセレンとともに300
℃に加熱することで脱水素反応を行い、その炭素骨格の構造解析に貢献
しました。
※ディールスは控えめな性格でしたが、ユーモアにあふれた人柄で、
多くの学生たちに敬愛されたと言われています。
クルト・アルダー
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アルダーは1902年に、当時ドイツ領だった北シレジア地方の工業
都市ケーニヒスヒュッテ(現在はポーランド領のクローレウスカ・フー
タ)で生まれました。
地元の学校で学びましたが、第一次大戦後に生まれ故郷がポーランド
領となったため、一家でベルリンへ移住します。
ベルリンで初等・中等教育を終えた後、ベルリン大学およびキール大
学のディールスのもとで化学を学びました。
1926年に博士号を取得してディールスの助手になった後、193
0年にキール大学講師、1934年には同大学の教授に就任します。
しかし2年後には職を辞して、ケルン北郊のレーベルクーゼンにある
染料会社(I.G.Farben)の科学研究所長に就任し、一時工業界に転身し
ました。
その後1940年になってケルン大学化学教室教授として大学に復帰
し、生涯ここにとどまりました。
ディールス・アルダー反応
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二人の共同研究による、ディールス・アルダー反応(ジエン合成反応)
は、1928年に最初の報告が行われました。
この反応は、単結合によって隔てられた二つの二重結合を持つ化合物
(共役ジエンと呼ばれるもの)に対して、活性化された二重結合をもつ
化合物(親ジエン化合物)を反応させるものです。
具体的な一例としては、共役ジエンとして1,3-ブタジエンやイソプレ
ン、親ジエン化合物として無水マレイン酸を用いた反応が挙げられます。
(これは1928年に最初に報告されたものの一例になります)。
この2つの化合物は容易に反応して、二環式化合物であるテトラヒド
ロフタル酸無水物(シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物)が生成物
として得られます。
彼らはまた、この種の反応が容易に起こり、生成物の収率も高いこと
を示しました。
そしてジエン合成の一般的条件と合成法としての全般的な見通しにつ
いての研究を継続して続け、この反応の体系化を行いました。
これにより、親ジエン化合物における二重結合が(カルボキシル基、
カルボニル基、シアノ基などの)電子求引性の置換基によって活性化さ
れていれば、反応は一般的に起こり得ることが示されました。
※一方で共役ジエン側は、電子供与性の置換基を持つほど反応が進み
やすくなる傾向があります。
また立体化学的な見地からは、ジエンへの付加がシス配置であること
を確認し、二重結合の2つの置換基が同じ側になるように反応が起こる
ことを示しました。
このディールス・アルダー反応によって得られる二環式化合物は、天
然有機化合物であるテルペンやある種のビタミンとも関連し、その合成
手段としてこの反応が特に有用であることがわかりました。
それ以外に合成ゴム、殺虫剤、プラスチックなどの分野への応用も行
われ、有機合成化学の発展にきわめて役立つ手法となりました。
ディールスとアルダーはこの業績により、1950年のノーベル化学
賞を二人で受賞しています。
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3.あとがき
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