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化学なんて大嫌い!という人のための
風変わりなヒント 第41号
2013年9月29日発行
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<目次>
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1.一風変わった化学の授業
〜 ベリリウムについて 〜
2.化学をつくった人たち
〜 ロベルト・W・ブンゼン 〜
3.あとがき
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1.一風変わった化学の授業
〜 ベリリウムについて 〜
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今回はベリリウム(Be)を取り上げます。
これまでに水素、ヘリウム、リチウムについては書いてきているので、
今回はその次の元素であるベリリウムを選びました。
ベリリウムの性質と概要
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ベリリウム(beryllium)は緑柱石(ベリル)の成分として天然に存在
しますが、この鉱物名(ギリシア語でberyllos)にちなんで、ドイツの
クラプロートがベリリウムと命名しました。
1797年にフランスのヴォークランがベリリウムを含む金属酸化物
を発見しましたが、ベリリウムの単離まではできませんでした。
ベリリウムの金属酸化物はアルミナに似ていますが、アルミニウムと
は異なってミョウバンをつくらず、過剰の水酸化カリウムにも溶けない
ことが確認されていました。
また渋みがなく甘みがあったことから、当初はギリシア後の「甘い
(glykys)」にちなんでグルシナム(glucinum)と呼ばれていました。
1828年になって、ドイツのヴェーラーと、フランスのビュシーが
それぞれ独自に緑柱石から単体を分離しました(二人とも塩化ベリリウ
ムを金属カリウムで還元するという同じ手法を用いています)。
地殻におけるベリリウムの存在量は少ない(2.6ppm)ですが、緑柱石、
ベルトランド石、金緑石(クリソベル)などに含まれています。
なお、緑柱石は含まれている元素によって緑、青、淡黄色などの様々
な色のものがありますが、宝石として用いられるエメラルドやアクアマ
リンは緑柱石の一種です。
ベリリウムの安定核種としては質量数9の核種のみが存在していて、
その他の同位体としては、質量数7と10のもの(どちらも放射性核種)
が知られています。
ちなみに質量数10のベリリウム(半減期150万年)は地球の大気
上層において、酸素の原子核と宇宙線との相互作用にて生じます。
ベリリウムの単体は、塩化ベリリウム(BeCl2)と塩化ナトリウム
を加熱し、その溶融物を電気分解するか、あるいはBeF2をマグネシウ
ムで還元することにより得られます。
ベリリウムの単体は銀白色の金属です。
金属の中でも軽い部類に入りますが、高い融点(1287℃)と高い
弾性率が特徴です。
また熱伝導率が高く、磁性を持たない、X線をよく透過するという性
質があります。
ラジウムやポロニウムから放出されるα線をベリリウムに当てると、
中性子を放出します。
ベリリウムは室温では比較的反応しにくい傾向があり、600℃以下
では空気中で酸化されません(表面に酸化皮膜ができるためです)。
また赤熱しても水や水蒸気と反応しないのですが、粉末状にすると、
空気中で光を出して燃えて、酸化ベリリウム(BeO)や窒化ベリリウ
ム(Be3N2)となります。
希塩酸などの薄い酸に溶けて水素を発生しますが、塩基性水溶液とも
反応して同様に水素を発生します。
ベリリウムが両性金属の性質を持つ点は、他の同族元素とは異なり、
どちらかというとアルミニウムに近い性質があります。
水溶液中での原子価は+2ですが、ベリリウム化合物の化学結合は、
同族元素の化合物に比べてより共有結合的であり、イオン結合性に乏し
いのが特徴です。
これは原子半径が小さく、原子核の正電荷の影響が周りの電子におよ
びやすいことから、電子を放出しにくいためです。
そしてこの共有結合性の化学結合をつくりやすい性質から、多くの有
機金属化合物を形成します。
※ベリリウムとマグネシウムはカルシウムなどの他の同族元素とは異
なる点が多いので、アルカリ土類金属には含めないことが多いです。
酸化ベリリウム(BeO:ベリリア)は、耐火性に優れ、熱伝導性が
よく、化学的にも安定です。
他の同族元素の酸化物は、水と反応して水酸化物になりますが、酸化
ベリリウムは安定です。
理化学用の特殊磁器、原子炉材料やロケットの燃焼室などに使用され
ています。
ベリリウムの用途
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ベリリウムの最大の用途は、銅あるいはニッケルとの合金用です。
熱と電気の伝導性に優れ、高弾性であり、強度、粘り強さ、耐食性を
高める性質を利用しています。
銅やニッケルに対しては、2%程度の量まで添加されます。
2%のベリリウムを含む銅は、純銅に比べて6倍の強度を有します。
またこの合金は電気伝導性に優れ、耐摩耗性がよく、弾性があって磁
性がないなどの特徴を持っています。
具体的には、航空機のエンジンの可動部分や、精密機器、電子部品、
ミサイル、通信衛星などに利用されています。
2%のベリリウムを含むニッケル合金は、高温用ばね、コネクターな
どに用いられます。
※日本では使われていませんが、ベリリウムを用いた合金は、外国で
は衛星の構造部材に多く使われているとのことです。
強度、弾性ともにアルミニウム合金やマグネシウム合金よりもさら
に優れていますが、その反面、加工が難しいのと、毒性があるとい
う理由から、特殊な設備を持つ工場でしか扱えないという欠点があ
ります。
ベリリウムは中性子の減速材や反射材として有用で、原子炉用材料と
して重要です。
※なお減速材の他の例としては、軽水(H2Oのこと)重水(D2O)、
高純度の炭素があります。
減速材の候補となるのは、原子核の質量が比較的中性子の質量に近
く、中性子の吸収が少ない物質になりますので、その意味でベリリ
ウムは良好な減速材となります。
またベリリウムはX線をよく通しますが、これはベリリウムは原子番
号が小さいため、原子核のまわりの電子数が少なく、かつ原子核に引き
寄せられて安定であり、X線が電子と相互作用することが少ないことに
よります。
この性質を利用してX線管からX線を取り出す窓部分に使用されてい
ます。
特殊な用途としては、ベリリウムにα線をあてると、中性子が発生す
ることから、実験室内での中性子線源に用いられます。
※この方法は、1932年のチャドウィックによる中性子の発見にも
用いられました。
(ラジウムからのα線をベリリウムに照射したところ、電荷を持た
ないが質量が陽子と同じくらいの未知の粒子(中性子)が放出され
ることを確認したことによります)。
ベリリウムは密度がアルミニウムやチタンより小さく、弾性率がアル
ミニウムの4倍もあること、さらに剛性がタングステンをしのいで金属
中で最大である点は、音響用材料とくに振動系材料として最適ですが、
やや加工性に難があり、高価でもあります。
ベリリウムの毒性に関して
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発見されたときから甘味があることが知られていますが、ベリリウム
とその化合物を取り扱う際には十分な注意が必要であり、間違っても口
に入れてはいけません。
ベリリウムの粉末や粉塵を吸い込むと、肺に慢性の炎症を起こし、呼
吸困難となります。
そしてこの症状は、ベリリウムが肺から身体の他の部分に運ばれて除
かれても継続 します。
(この症状はベリリウム中毒症と呼ばれています。また、ベリリウム
は主に骨に濃縮されます)。
そのため安全管理として、空気中のベリリウム濃度の上限が規定され
ています。
※なお、経口摂取の場合は、吸入した場合よりもいくらか毒性は弱い
とされています。
ベリリウムは生物に必須のマグネシウムといくらか類似した化学的性
質を持っていることから、ある種の重要な酵素中のマグネシウムを置換
してしまい、その結果としてその酵素の働きを阻害するものと考えられ
ています。
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2.化学をつくった人たち
〜 ロベルト・W・ブンゼン 〜
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今回は、ドイツの化学者であるブンゼンを取り上げます。
彼の名前が付いているブンゼンバーナーで、名前を聞いたことがある
人も多いと思います。
ブンゼンは1811年にドイツのゲッティンゲンで生まれました。
父親は言語学の教授であり、大学の図書館の管理者でもありました。
ゲッティンゲン大学で化学を学び、卒業後、パリ、ベルリン、ウィー
ンなどのヨーロッパ各地で学んだ後、1830年に博士号を取得します。
1836年にカッセル大学(ヴェーラーの後任)、1838年にはマ
ールブルク大学、そして1851年にはブレスラウ大学の教授をそれぞ
れ順に務め、1852年にはハイデルベルク大学の実験化学教授となり、
定年までそこにとどまりました。
ブンゼンの行った最初の重要な仕事は1837年に手がけたカコジル
化合物の研究です。
(カコジル化合物というのは、ヒ素を含む有機化合物であり、有機金属
化合物の中で初期のもののひとつです)。
この研究によりブンゼンは、有機化学における「基」という概念を提
示しました。
その一方で、この研究の最中に起きた実験室での爆発事故により、彼
は右目を失明した上、数週間にわたって病床に就くことになってしまい
ました(さらにヒ素中毒であやうく命を失うところまでいきました)。
その後は、有機化学の研究からは遠ざかりましたたが、卓越した実験
技術を用いて、様々な実験装置や技術の改良を行い、電池、光度計、熱
量計、水流ポンプなどの数多くの実験器具を発明することになります。
その一例としては、まず1841年にブンゼン電池を考案しました。
これは、電池の陽極をそれまで使われていた白金から安価な炭素に変
えた電圧1.9Vの一次電池です。
1844年には明度を測定するためのグリース・スポット光度計を発
明します。
そして1870年には少量物質の熱容量を測定するためのブンゼン氷
熱量計(※1)を考案しました。
彼の無機化学における研究としては、彼自身が発明した一次電池を用
いた電気分解でマグネシウムなどを単離したことにより、電気分解での
金属の製法を研究したことが挙げられます。
(マグネシウムが大気中で燃焼する際に強い光を出すことも示しました)。
またロスコーとの共同研究で、水素と塩素からの塩化水素合成の際の
光反応を研究し、光化学の基礎となっているブンゼン−ロスコーの法則
(※2)を発見しました。
ブンゼンの最大の功績は、塩酸塩などの金属塩を、白熱するまで炎の
中で加熱した際に放出されるスペクトル線の分析に関してです。
この技術自体はすでにアメリカの物理学者のアルターによって提唱さ
れていたものではありますが、1859年から始まった同じハイデルベ
ルク大学の物理学者であるキルヒホッフとの共同研究で成果が得られま
した。
キルヒホッフは、発光分析を研究しているブンゼンに、光を分析する
方法として、着色液や着色ガラスのフィルターを用いて分光するよりも、
プリズムを使って分光する方がよい結果が得られることを示唆します。
二人は協力しながら分光器(可動プリズムと固定レンズを装備したも
の)を作成し、その装置を用いて光スペクトル分析を行うと、微量元素
でも同定できることを示しました(これは分光分析法と呼ばれます)。
ブンゼンとキルヒホッフはこの方法を用いて、ある鉱物のスペクトル
線を観察したところ、特徴的な2本の青色の線を発見し、1860年に
それが新元素となるセシウムであることを確認しました。
また同じ方法で、1861年には2本の深紅色の線を発見することが
でき、新元素であるルビジウム(Rb)の発見となりました。
※なお、後に同じ分光分析法を用いて、他の化学者が新元素を発見し
ています(クルックスによるタリウムの発見などがその一例です)。
後にこの方法を応用し、分光器を使って太陽や星からの光の分析を行
うことによって、そこにどんな元素が存在しているのかを推定すること
が可能となりました。
(例えばヘリウムは、地球上で発見される前に太陽光のスペクトル中か
ら発見されました)。
ブンゼンは生涯にわたって独身でしたが、ブンゼンの実験室には、各
地からの学生や研究者が集まってきました。
また広く一般の人からも人望を集めていたと言われています。
※最後に余談ですが、ブンゼンバーナーは、主としてブンゼンの実験
室にいたデスデガという人物によって考案されたのではないかと言
われていて、彼のブンゼンバーナーの発明に対しての寄与は意外な
ことにそれほどなかったのではないかという説があります。
○ 簡単な用語紹介と補足
※1 ブンゼン氷熱量計
等温熱量計のひとつ。測定しようとする熱量で氷を融解し、その融
解量から熱量を決定する。氷の融解量は、融解に伴う氷の体積変化
を水銀の変位に変換して測定される。
※2 ブンゼン−ロスコーの法則
光化学反応において、変化する物質の量は、生成物質による二次的
な妨害がなければ、吸収された光の強度とその照射時間の積に比例
する、という法則。
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3.あとがき
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ここのところ、以前よりも少し多く本を読むようになりました。
またこれまでは、読んだ後でメモなどを取ることは少なかったのです
が、気になる本については(まだ数は少ないですが)アウトプットをす
るようにしています。
これを行うと、ただ読んだだけの場合よりも記憶への定着率が多少は
向上したように感じています(気のせいかもしれませんが・・・)。
読後にアウトプットをするのは面倒なときもありますが、時間を有効
に使っていくという観点からも、できるだけ継続していきたいと思って
います。
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◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための
風変わりなヒント ◇◇
・発行者 後藤 幹裕
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