ストレッチングとは
ストレッチングとは、文字通りストレッチ(伸ばす)ことで、それによって身体的・精神的な効果が得られると考えられています。
スポーツ現場において、ウォーミング・アップやクール・ダウンに用いられたり、疾病や傷害のリハビリテーションの手段の一つとしても広く活用されています。
そして、その最大の効果は柔軟性を高めるということであり、身体を柔らかく保つことでケガの予防にも繋がり、また、ケガや疾患によって拘縮(関節が固まって動かなくなること)を起こした場合に関節を柔らかくするための治療の一つとして行われます。 先頭に戻る
当院では、最大限にその効果が得られるように適切な方法によってストレッチングを行っています。
①ウォーミング・アップを行う。
ストレッチング自体が理想的なウォーミング・アップであるとも言えますが、いきなり強く行うと、逆に故障の原因になってしまうこともあります。
当院では、低周波やホットパックなどで、身体(筋肉)をリラックスさせてからストレッチングを行います。
通常の場合、軽いジョギングや準備体操などで少し身体を温めてから行うのが良いでしょう。
②反動をつけずにゆっくり行う。
以前は、反動をつけてグイグイと行われていましたが、現在、そのようなやり方はあまり勧めらていません。
反動をつけて行う方法をバリスティック・ストレッチングと呼ばれ、ゆっくりと反動をつけずに行う方法をスタティック・ストレッチングと言います。
長期的にみた場合、両者に大きな差はないとも言われますが、反動をつけることで、筋肉や腱を痛めてしまったり、急に強く引っ張られたことによって反射的に筋肉が縮まってしまうという逆効果(伸張反射と言います)が起こってしまいます。
③無理をしないで徐々に行う。
筋肉や腱が多少緊張を感じる程度伸ばさなければ効果は上がりませんが、痛いのをガマンして行うのはよくありません。息を止めて頑張らずに段階的に行っていくことが大切です。
また、関節は動く方向や動く範囲(可動域)が決まっていて、それ以上動かすと逆効果であるばかりではなく、ケガをすることもあります。正しい方向に適切な範囲で動かすように心掛けましょう。
④継続すること。
通常、ストレッチングを行った場合、実施前と比較すると劇的に関節の動く範囲が広がってきます。ただし、その効果は一時的なものであり、時間が経つと元に戻ってしまいます。
継続してストレッチングを行うことで柔らかい状態を保つことが出来るようになります。また、一度柔らかくなっても、やめてしまうと徐々に固くなっていきます。
ですから、当院ではケガが治って通院しなくなっても、再発予防の為にも自宅でもストレッチングを継続することを提案しています。
⑤筋肉の性質や構造を理解して行う。
筋肉はいろいろな性質や構造があり、それを理解してストレッチングを行うことは非常に大切なことです。
例えば、肘を曲げようとした時には、主に上腕二頭筋という筋肉が収縮しますが、反対側の筋肉(上腕三頭筋)が緩むことでその動作の邪魔をしないように脳から命令がでます。このような働きを相反神経支配と言います。
また、筋肉が急に引っ張られると逆に縮もうとする性質(前述の伸張反射)や、あるいは二つの関節を跨いで繋がっている筋肉(二関節筋)があり、この場合、その二つの関節の動きを考慮してストレッチングを行わなければなりません。 先頭に戻る
筋肉の伸張反射
筋肉は、急に引き伸ばされると逆に縮もうと働きます。これは身体を守ろうとする防御反応の一つで伸張反射と呼ばれます。
筋肉が引き伸ばされると、筋紡錘と呼ばれる感覚受容器(センサー)が刺激を受け、その刺激が知覚神経から脊髄に伝わり、こんどは脊髄から運動神経を経て筋肉へと刺激が返され筋肉を収縮させます。
ちなみに、反射と言うと条件反射が有名ですが、反射とは刺激が脊髄に伝わり、そこから刺激が返されることによって起こる反応で、条件反射は脳に刷り込まれた記憶によって起こる反応であるため、厳密に言うと反射とは言えません。 先頭に戻る
筋肉の相反神経支配
関節には、お互いに相反する働きをする筋肉、例えば肘には、伸ばす筋肉(上腕三頭筋)と曲げる筋肉(上腕二頭筋)があり、腕を曲げたり伸ばしたりできます。
肘を曲げようとした時、その動作をするように働く上腕二頭筋に対して、反対の働きをする上腕三頭筋を、上腕二頭筋の拮抗筋と呼び、肘を曲げようとする上腕二頭筋を働筋と呼びます。(伸ばそうとする場合は上腕三頭筋が働筋で上腕二頭筋が拮抗筋となります。)
しかし、この二つの筋肉が同時に働くとお互いに引っ張り合ってしまい、上手く動かすことが出来なくなってしまいます。
そこで、身体は何か動作をしようとした時に、その動作に対する拮抗筋を弛緩させるように働きます。
この働きを相反神経支配と呼びます。 先頭に戻る
コントラクト・リラックス法(CR法)
効果的にストレッチングを行うには、伸張反射を起こさないようにすることと、相反神経支配の働きを上手く利用することが重要です。
しかし、伸張反射を逆に利用して効果を上げようとするのが、コントラクト・リラックス法です。
この方法は、まず、ストレッチングしようとする筋肉に力を入れて強く収縮させてから、ストレッチングを行う方法です。
このように、一度強く力を入れて、抜くことにより、筋肉がよりリラックスした状態でストレッチングを行うことができます。また、適度に収縮と弛緩を繰り返すことにより、筋肉の緊張がほぐれる効果があると考えます。 先頭に戻る
PNF法
PNFとはProprioceptive Neuromuscular Facilitation(相当する日本語訳なし:固有受容性神経筋昂進)の略で、概念は広く知られています。
その基本的な考え方はCR法と相反神経支配を組み合わせ行うということです。
具体的な方法としては、まず、ストレッチングしようとする筋肉を強く収縮させ、次にその拮抗筋を収縮させます。こうすることで相反神経支配の働きにより目的の筋肉はいっそうリラックスします。
そして、目的の筋肉のストレッチングを行うという方法です。 先頭に戻る
PIC法
PIC法とはPassive static stretching of the agonist-Isometric contraction of the agonist-Concentric contraction of the antagonist(働筋のパッシブ・ストレッチング‐働筋のアイソメトリクス‐拮抗筋の等張性収縮)の略で、
具体的な方法は、まずは、パートナー等に目的の筋肉をゆっくりとストレッチングしてもらい、そのまま、ゆっくり押し返すように押し返します。このとき、パートナーは押し返されないようにしっかりとその位置を保ちます。
そのあと、自分で拮抗筋を収縮させながら目的の筋肉を伸ばして行きます。そして、さらにパートナーにゆっくりと目的の筋肉のストレッチングをしてもらうという方法です。 先頭に戻る
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二関節筋
二関節筋とは、二つの関節を跨いでいる筋肉のことで、大腿直筋、上腕二頭筋、ヒラメ筋などがあり、ストレッチングやトレーニングをする時には、そのことを理解しておかなければ効果的な訓練を行うことができません。
下の図で大腿直筋を例にして、簡単に説明します。
大腿直筋は、骨盤(下前腸骨棘)から脛骨(脛骨粗面)まで繋がっていて、その間に股関節と膝関節があります。
大腿直筋は、中央の図のように、膝を屈曲することでストレッチされますが、右の図のように股関節が屈曲されると、股関節の部分で緊張が弛んでしまうためにしっかりと伸ばすことができなくなってしまいます。
このような、人体の構造を理解していなければ、適切なストレッチングを行うことはできません。
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