エレベーターは、機体の前後方向(ピッチ軸)の回転運動を制御するために用いられ、水平尾翼は機体の(前後方向の)傾きを安定させる働きをする。傾きが一定で飛行できるためにはピッチ軸のモーメントの釣り合いが保たれている必要がある。垂直方向の力のみを考えると、機体には主翼に働く揚力、水平尾翼に働く揚力、重心位置に働く機体重量(重力)の3つの力が働く。主翼揚力が働く位置(揚力中心)と重心位置の前後により、重心周りのモーメントがつりあうために尾翼に働く揚力の向きが上(図17a 重心が揚力中心より後のとき)あるいは下(図17b 重心が揚力中心より前のとき)になる。
主翼と水平尾翼の形と位置を決めると最適な重心位置が決まる。重心位置はたとえば機首に重りをつけることで調整できる。自分で設計した紙飛行機を作るときは、飛行機を作った後で、試験飛行をしながら重りを調整して最適な重心位置にあわせる。
重心を揚力中心より後に置いているのはグライダーなど、滑空性能(滑空比=飛行した距離÷降下した高さ)を重視する飛行機や、紙飛行機などであり、操縦性能を重視する飛行機では重心位置は揚力中心より後に置く。
水平飛行をしている機体の速度が少しだけ増えた時を考えてみよう。このとき主翼と尾翼に働く揚力は同じ割合で増える。そのためピッチ軸のモーメントは相変わらずつりあったままであり、飛行機の姿勢は変わらない。これが水平尾翼がピッチ安定性を実現するメカニズムである。
エレベーターを上向きに操作したとき( 図12)機体は上向きになる。機体が運動する方向は変わらないため主翼は飛行方向(=風が主翼に当たる方向)に対してより大きな角度を取り(主翼の迎角が増え)、揚力が増加する。増えた揚力により機体は上昇する。
推進動力を持つ飛行機の場合には推進軸が上向きになり推進力により上昇する効果も加わる。
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