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化学なんて大嫌い!という人のための 風変わりなヒント
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 第29号(2007.9.30発行)



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   化学なんて大嫌い!という人のための
              風変わりなヒント  第29号
                  2007年9月30日発行

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 <目次>
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 1.一風変わった化学の授業
     〜 マグネシウムについて

 2.化学をつくった人たち
     〜 アドルフ・フォン・バイヤー

 3.あとがき
 -------------------------------------------

 ────────────────────────────────
  1.一風変わった化学の授業
          〜 マグネシウムについて 〜
 ────────────────────────────────

  今回はマグネシウムについてです。
  それほど目立つ元素ではありませんが、他の元素と同様、様々なとこ
 ろに存在しています。


 マグネシウムの性質
 ──────────

  マグネシウムは銀白色の光沢がある金属で、比較的やわらかい性質の
 金属です。

  1829年にフランスのビュシーが、塩化マグネシウムを金属カリウ
 ムで還元することにより、はじめて単体として得られました。

  ※ちなみにマグネシウムの名前は、かつてマグネシウムを含む鉱物を
   産出していたギリシアのマグネシアという地名に由来しています。

  地殻には8番目に多く存在する元素で、海水や様々な鉱物に含まれて
 いますが、単体では存在していません。

  純金属の状態では酸化されやすい性質ですが、室温では表面に酸化皮
 膜が形成されるため、それ以上酸化されない状態となります。


 工業的製法
 ──────

  工業的には、マグネシウムを含む鉱物をフェロシリコン(ケイ素と鉄
 の合金)と混ぜて加熱した後に蒸留して分離する方法や、海水より得ら
 れる塩化マグネシウムを電気分解する方法により金属マグネシウムを得
 ることができます。
 (電気分解の方がより純度の高いものが得られます)。


 マグネシウムの用途
 ──────────

  マグネシウムは比重がアルミニウムより軽いため、軽量化を目的とし
 て合金の形で航空機や自動車の部品に使われますが、製造コストが高い
 のが難点でもあります。

  ※最近は、軽量小型化が進む電気製品の構造用材料としても使用され
   てきています。


  金属マグネシウムは塊の状態では燃やすことが難しいですが、粉末や
 マグネシウムリボンのような反応しやすい形にすると燃えやすくなりま
 す。

  そして一旦燃えはじめると、もともと反応性が高いため消火するのが
 難しくなります。
  この性質を利用して、第2次大戦中は焼夷弾に用いられたこともあり
 ました。


  また、マグネシウムはその適度な反応性の高さを利用して、チタンを
 精製する際の還元剤として使用されています(これはマグネシウム還元
 法、クロール法と呼ばれている方法です)。


  有機合成の分野では、グリニャール試薬を調整するためにも使われて
 いて、有機合成反応において重要な役割を果たしています。

  ※グリニャール試薬については、第20号で取り上げています。
   よかったらこちらも参照下さい。
   ⇒ http://www13.plala.or.jp/chem-hint/backnumber/020.html#2


 生物との関わり
 ────────

  マグネシウムはヒトや動物にとって必須元素のひとつであり、何らか
 の形で摂取する必要がありますが、通常の食事を摂っている限りは問題
 にならないと言われています。

  また、クロロフィル(葉緑素)の中心部分にはマグネシウムが存在す
 ることから、植物にとってもマグネシウムは重要な元素であることがわ
 かります。

  ※植物の葉が緑色に見えるのは、クロロフィルが可視光線の緑色の領
   域を吸収しないためです(反射してくる緑色の光が目に入ってくる
   ため緑色に見えます)。


 余談として
 ──────

  にがりの中にも硫酸マグネシウムなどの形でマグネシウムが含まれて
 いますが、それが苦味を感じる理由のひとつになっています。


 ────────────────────────────────
  2.化学をつくった人たち
        〜 アドルフ・フォン・バイヤー 〜
 ────────────────────────────────

  今回は、ドイツの有機化学者であるバイヤーを取り上げます。
  インジゴ(藍の主成分)の研究をはじめとする様々な研究により、有
 機化学の発展に貢献した人物です。



  バイヤーは、1835年にベルリンで生まれました。
  父親はプロイセンの将軍であり、後にベルリン測地協会会長も務める
 ほどの人でした。

  1853年からハイデルベルグ大学でブンゼンとケクレに学びます。

  1858年にはベルリン大学にて博士号を取得し、その後ベルリンの
 専門学校で有機化学の講師となりました。

  1872年にシュトラスブルク大学で化学教授となり、1875年に
 はリービッヒの後任としてミュンヘン大学教授に就任します。
  そしてそれ以後はそこに留まりました。



  バイヤーの最初の研究は尿酸およびその誘導体に関するものでしたが、
 この研究は後にバルビツール酸(※1)発見の契機となりました。

  1865年頃から染料に興味を持つようになり、インジゴの研究を開
 始します。

  ※植物染料の藍は古くから染料として用いられていましたが、その主
   成分であるインジゴの構造についてはよくわかっていませんでした。

  1878年になってインジゴの全合成に成功しましたが、その時点で
 はまだ確実な構造が決定できていませんでした。

  その後1883年になって、インジゴを亜鉛粉末で還元することでイ
 ンドールに導くことができ、ようやく構造を決定することができました。

  そして構造が決まったことで本格的に工業的製法の研究が開始され、
 有機合成化学、合成染料工業の発展につながっていくことになります。

  またインジゴの研究中である1868年には、バイヤー門下のグレー
 ベが赤色染料のアリザリン(※2)の合成に成功しています。



  バイヤーは、天然染料に関する研究だけでなく、フェノールフタレイ
 ンやフルオレセインなどの発見も行っています。

  さらに1871年にはフェノールとホルムアルデヒドを縮合させると
 樹脂状の化合物が得られることを発見しました。

  後にベークランドがこれを改良して「ベークライト」の商品名で製造
 することになります。
  バイヤーの発見は、合成樹脂のさきがけとなるものでした。



  環状化合物や不安定な炭素化合物に関する研究、ベンゼンとその誘導
 体の還元生成物に関する研究、炭酸同化作用における糖類の合成に関す
 る研究など、バイヤーは幅広い研究を行っています。

  そして1905年には、インジゴをはじめとする有機化学への貢献が
 認められ、ノーベル化学賞を受賞しました。


  バイヤーの研究室からは、フィッシャー、メイヤー、ウィルシュテッ
 ター、グレーベ、リーベルマンらの優れた化学者が多く輩出され、それ
 以後の化学の発展に大きな貢献をしています。



 ○ 簡単な用語紹介と補足

  ※1 バルビツール酸
    マロニル尿素とも呼ばれる化合物。この化合物の誘導体の中には
    催眠作用を有するものが多いが、この化合物そのものには催眠作
    用はない。

  ※2 アリザリン
    アカネの根に配糖体として含まれている化合物であり、代表的な
    染料の一種。最初に合成された天然染料として知られる。媒染剤
    によって様々な色を出すことができる。


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  3.あとがき
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  やるべきことが立て込んでいるときに限って、さらにいろいろなこと
 が追加で生じてしまい、時間を取られてしまうことがあります。

  こんなときはパニックにならないように、ひとつひとつ処理していく
 ことを心がけています。
 (私はすぐに慌てふためいてしまうことが多いので、この点については
 できる限り気をつけるようにしています)。


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  ※参考文献はこちらにまとめてあります。興味がありましたらどうぞ。
   → http://www13.plala.or.jp/chem-hint/reference.html


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  ◇◇ 化学なんて大嫌い!という人のための          
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