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  1. PaO2と酸素飽和度
  2. 交感神経の走行と解剖
  3. 局所麻酔薬の基礎知識 〜リドカイン lidocain〜
  4. 降圧薬の使い方
  5. 多汗症について
  6. ジギタリス製剤の基礎知識
  7. IVH必勝法〜鎖骨下静脈編〜
  8. 心室肥大(Ventricular Hypertorophy)
  9. NSAIDsによるCOX-2阻害について
  10. アスピリン

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研修医宿題

アスピリン

本間 幸恵

アスピリンジレンマ

 アスピリンは、抗血栓薬としても使用されているが、シクロオキシゲナーゼの作用を阻害することにより、血小板でのトロンボキサンA2(TXA2)の生成を阻害し、血栓の発現を抑制する方向に作用する。一方、血管壁のシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害により、抗血栓的に作用するプロスタサイクリンの産生も阻害され、これにより血栓の発現をかえって促進してしまう。つまり、アスピリンの服用は、血栓症の予防に関しては、両刃の剣となる可能性があり,これがいわゆるアスピリンジレンマとよばれている。

アスピリンジレンマの解決策

アスピリンの少量使用
  血小板のシクロオキシゲナーゼ(COX)はアスピリンに対して敏感で、しかもその阻害は不可逆的であるのに、血管壁のシクロオキシゲナーゼ(COX)はアスピリンに対して比較的鈍感で、その阻害も早期に回復することから、アスピリンを少量与薬して血小板のアラキドン酸代謝経路のみを阻害しようとするものである。

追加記事

 アスピリンは血小板のCOX(シクロオキシゲナーゼ)を抑えると同時に血管壁のCOXも抑えます。しかし、血小板のCOXのほうが血管細胞のCOXよりもアセチル化されやすく、逆に考えれば、非常に薄い濃度のアスピリンを使うと選択的に血小板のほうだけ抑えられる。
  アスピリンを1日30 mgを毎日飲み続けるとTXA2の産生がほとんどゼロのなってしまう。PGI2の産生は全く影響が認められない。
  アスピリンの抗血栓作用は、主としてアラキドン酸に働くシクロオキシゲナーゼを抑制し、強力な血小板凝集物質であり、血管収縮物質であるTXA2(トロンボキサン)の産生を阻害することに基づくと考えられている。しかし、血管内皮細胞でアラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ(COX)によって血小板活性化抑制物質であり、血管拡張作用を持つPGI2に代謝されるため、一方でアスピリンは抗血小板作用を発揮するPGI2の産生を抑制することになる。
  ところが、アスピリンにより血小板のCOXは非可逆的に阻害されますが、血管壁のCOXは短時間(24時間)以内に再生されること、アスピリンに対するCOXの感受性は血管壁よりも血小板の方が強いので、はるかに低用量(30〜300mg程度)によって、PGI2の抑制は比較的軽度であるが、TXA2の抑制は十分に行えることが判明している。

出典:Catelka Lawson F.et al:Arthritis Rheum,43(a),S298(2000)

アスピリンレジスタンス

 アスピリンレジスタンスと呼ばれる新しい病態生理が注目されている。

 患者によってはアスピリンの抗血小板作用が機能せず、心筋梗塞や心臓血管死、脳卒中などのリスクが増大する。安定冠疾患(stable coronary disease)患者の5〜10%にアスピリン抵抗性が観察され、特に高齢者や女性、また非喫煙者にその傾向が見られるとの報告もある。

 アスピリンレジスタンスのハイリスク患者には、効果的なトロンボキサン阻害薬の追加が必要とされているが、こうした場合の有効な薬剤としては現在、米国では硫酸クロピドグレルが挙げられている。

出典:医薬ジャーナル 2002.6

スーパーアスピリン

 アスピリンは、一般的な意味では安全性が最も確立されたNSAIDsであると言える。しかし、意外なことに、その薬理作用は、未だにその全容が分かっていない。

アスピリンの添付文書には

(1)鎮痛作用
  中枢神経の抑制及び痛みの発生部である末梢部位における鎮痛効果によるが,詳細な作用機序は不明である。内臓痛に対しては効果が薄く体表面の痛みによく作用する。
(2)解熱作用
  間脳視床下部の温熱中枢に働き,末梢血管の流血量を増加させて熱放散を大にすることに基づいている。
(3)抗炎症作用
  炎症の過程で蛋白分解酵素Fibrinolysinを抑制することによるものであろうと考えられている
(4)その他の作用
  利胆作用として肝臓に働いて胆汁の分泌を促進し,抗痛風作用として尿酸の尿中排泄を増大,尿細管における尿酸再吸収を抑制する。

とある。

 アスピリンの薬理作用は、プロスタグランジンの生合成抑制と理解して間違いないものと思われる。アスピリンはアラキドン酸カスケードに働き、プロスタグランジンやトロンボキサンの合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)の活性を阻害する。炎症に重要な役割を果たすプロスタグランジンの生成を抑えることから、解熱消炎鎮痛薬として広く使われていたが、つい最近になって血小板凝集抑制作用の適応が認可されました。これもアラキドン酸カスケードに関連したもので、血小板凝集作用を持つTXA2の合成阻害作用によって、血栓ができるのを予防する。

 ところで、アスピリンはその優れた薬理作用の一方で、副作用として胃腸管出血を引き起こすことが知られている。最近、この副作用を克服しうるものとしてスーパーアスピリンなる言葉が、登場してきた。そして、スーパーアスピリンには2種類あり、1つがCOX-2阻害剤、そしてもう1つがGpIIb/IIIa阻害剤である。さらに、NO放出性非ステロイド性消炎鎮痛薬(NO-NSAIDs)という一群の薬物が注目されている。

(1) GpIIb/IIIa阻害剤

 血小板の凝集が起こる最終経路では、接着分子フィブリノーゲンが血小板同士を結び付けます。このときフィブリノーゲンが結合する、血小板膜に存在する受容体の一つがGpIIb/IIIaである。GpIIb/IIIa阻害剤は、シクロオキシゲナーゼの働きによるPG産生に影響を与えないことや、あらゆアゴニストによる血小板凝集の最終経路を阻害することから究極の抗血小板薬であると考えられて、一部で「スーパーアスピリン」と呼ばれている。

 1995年、GpIIb/IIIa阻害作用を有するマウス、ヒトキメラモノクロナール抗体が、ハイリスク患者でのPTCA(経皮経管的冠動脈形成術)施行後の合併症防止を適応症として、また1998年5月には非ペプチド性のこのクラスの治療薬としてはじめて、不安定狭心症、非Q波心筋梗塞に対する血液凝固の適応で、FDAに承認された。

(2)COX-2阻害剤

 NSAIDsの長期使用による副作用の胃痛に悩まされていた患者は、COX-2阻害剤に変更したら、胃の痛みは起こることなく「すべてが全く変わったよう。」と語ったそうである。どんな作用をするかということではなくて、どんな作用をしないかという理由からCOX-2阻害剤を「super aspirin:極上のアスピリン」と喧伝する人たちも現れた。

 COX-2阻害剤のことを、まさった(スーパー)アスピリンと呼ぶのはある意味では正確ではないかもしれない。今まで使用してきたアスピリン製剤以上に強力な作用を有するわけではないからである。(COX-2阻害剤の鎮痛作用については特に強力ではなく、アスピリンとほぼ同程度であるというデータが発表されている。)しかし、鎮痛作用が同等であっても安全性に優れているという点で間違い無くCOX-2阻害剤はまさっている。

 ふたつのスーパーアスピリンに混乱してしまいそうだが、共通して、それぞれの目的で臨床応用されるときにアスピリンと同等の薬理作用を示しながらも、アスピリンによるような副作用やアスピリンジレンマが現れにくい、いわば「理想的治療薬」を意味する表現に思える。COX-2阻害剤に対しては期待も大きく、次々と臨床報告がなされている。

(3)NO放出性アスピリン

 アスピリンはその優れた薬理作用の一方で、副作用として胃腸管出血を引き起こすことが知られている。最近、この副作用を克服しうるものとしてNO放出性非ステロイド性消炎鎮痛薬(NO-NSAIDs)という一群の薬物が注目されている。この薬物は、従来のNSAIDsの有する解熱鎮痛、消炎作用を保持しつつも、胃腸に対する障害性が極めて少ないという性質を持つ。

 その中のNCX-4016は、マクロファージからのTNF-α産生上昇を引き金とする胃粘膜細胞のアポトーシスシグナルを、遮断することによって、胃粘膜保護作用を発揮することが分かっている。さらにNCX-4016は、プロスタグランジンの生合成阻害とは別に、マクロファージからのIL-1βの放出を抑制することが見いだされている。IL-1βは主に活性化T細胞、マクロファージより産生されるモノカインで、炎症反応に伴う急性期蛋白質の産生を誘導し、免疫反応での様々な役割を果たしている。

 NOはかつて、炎症反応、細胞障害に関わる物質として知られてきましたが、低濃度で抗炎症作用、高濃度では、細胞障害作用を持つ事が分かっている.

シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase)

 生体内の必須脂肪酸であるアラキドン酸からプロスタグランジン(PG)やトロンボキサン(TX)が生成される過程で、中間体であるプロスタグランジンG2の生成に関与する酵素である。近年、COXには以下の2種類のものがあることが遺伝子・蛋白レベルで明らかにされている。

COX-1: シクロオキシゲナーゼ-1(Cyclooxygenase-1)

 COX-1は正常な生理的条件下で、正常な腎臓や胃の機能、血管の恒常性を調節している酵素で,COX-1が生理的に活性化されると、抗血栓形成作用や胃粘膜における細胞保護作用を示すプロスタサイクリン(PGI2)、腎臓と胃粘膜の血流を増進するプロスタグランジンE2(PGE2)、血液の凝固過程において重要な役割を果すトロンボキサンA2(TXA2)が生成される。COX-1は、大部分の組織で恒常的に発現されているが、特に、血小板、血管内皮細胞、腎臓の集合管、胃粘膜で大量に発現されている。

COX-2:シクロオキシゲナーゼ-2(Cyclooxygenase-2)

  COX-2は炎症を増強するプロスタグランジン(PG)を生成する酵素でで,炎症性刺激に反応して生成されることから、しばしば「炎症性COX」とも呼ばれます。 COX-2は、成長因子、サイトカイン、ホルモン、エンドトキシンなどの刺激に反応して生成される。正常な生理的条件下では、大部分の組織でのCOX-2の発現量は非常に低いレベルであるが、炎症局所では、COX-2発現が劇的に増加する。

 炎症の局所ではプロスタグランジン(PGs)が多量に産生され炎症の進展に寄与しているが,特に炎症反応の時間経過に従って,産生されるPGsの種類が異なることが見い出されている.PGsの産生系は体内の多くの組織に備わっており,膜の脂質よりホスホリパーゼの作用によって切り出されたアラキドン酸が,シクロオキシゲナーゼ(COX)の作用を受けて,PGH2となり,さらに各PG合成酵素の作用によって,それぞれのPGs(PGI2,PGE2,PGD2,PGF2a,TXA2など)へ変換される.

 それぞれのPGsは異なった生理活性を示す上に,組織・器官特異的に産生される.例えば,血管壁では血小板凝集抑制作用をもつPGI2の産生が主であり,血小板では血小板自身の凝集を促進するトロンボキサンA2が産生されると報告されてきた.近年恒常型のシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)に対して,炎症時や感染などの刺激によって誘導されるCOX-2が発見されると,炎症時のPGs産生の調節には誘導型のCOX-2が大きな働きをしていると考えられるようになった.

September 30, 2002

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