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  1. 下剤
  2. 血栓症と抗凝固療法
  3. 重症筋無力症と胸腺腫
  4. 呼吸機能検査
  5. 難治性肺胞瘻と第XIII因子について
  6. 縦隔腫瘍
  7. 腫瘍マーカー CA19-9
  8. MRIの特性
  9. 非小細胞肺癌の補助化学療法
  10. 輸液の基礎知識

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研修医宿題

下剤

水越 圭子

呼吸器外科ではしばしば術後に下剤を使用する。それは、腸運動低下が運動量の減少、塩酸モルヒネなどによって起こり腸閉塞になることを予防するだけでない。腸内容の増加により横隔膜を押し上げて肺を圧迫することを予防し、肺機能の改善を図る目的も大きい。下剤には大きく分けて2つの作用機序があり、患者さんの状態により、その使用は異なる。

・機械的下剤…腸管内容物に水分を吸収させることで体積を増量し、その刺激で蠕動を亢進、排便を促進する。長時間使用可能であるが作用が緩徐で速効性に乏しい。

・刺激性下剤…腸粘膜の刺激または腸管壁の神経叢を亢進し排便を促進する。効果が強く速効性があるが連続投与によって習慣性の可能性がある。また、大腸検査前に使用する薬剤もある。

<成分>酸化マグネシウム
A.酸化マグネシウム
1. 制酸作用
  水に溶けにくいので胃の塩酸を徐々に中和してMgCl2となり制酸作用をあらわす。
2. 緩下作用
  難溶性なので腸内において浸透圧により貯留した多量の水が、腸壁の伸展受容器を刺激して間接的に蠕動を亢進して緩下作用をあらわす。
性状:白色の粉末または粒で、においはない。

B.マグミット錠250・330mg
性状:酸化マグネシウムは白色の粉末又は粒で、においはない。

 

<成分>硫酸マグネシウム

C.硫酸マグネシウム
難吸収性塩の塩類下剤である。内服することにより、腸内水分及び分泌液の吸収を妨げ、腸管内に水分が貯留し、そのため腸壁が刺激され蠕動運動が亢進して瀉下を招く。

 性 状 :本無色又は白色の結晶で、味は苦く、清涼味及び塩味がある。

 

<成分>ラクツロース
・高アンモニア血症に伴う下記症候の改善
・精神神経障害、手指振戦、脳波異常
・産婦人科術後の排ガス・排便の促進
・小児における便秘の改善

D.モニラック・シロップ 65%
1.経口投与されたラクツロースの大部分は消化吸収されることなく下部消化管に達し、細菌による分解をうけて有機酸(乳酸、酢酸等)を生成しpHを低下させた。その結果、pH値酸性側で十分生育できるLactobacillusは増加し、Bacteroides、E. coli等は減少した。
2. 下部消化管に達したラクツロースは、その浸透圧作用により水分を貯留し、緩下作用を発揮するが、さらにウサギ腸管を用いた実験によりラクツロースの分解により生成した有機酸が腸管運動を亢進させることが示された。
3. ヒト腸管ではpHが高いほどアンモニアの腸管吸収率の高いことが認められているが、ラクツロースの分解によって生成した有機酸により腸管内pHが低下するため、腸管でのアンモニア産生及びアンモニアの腸管吸収が抑制され、血中のアンモニアが低下した。
4. ヒトの高アンモニア血症等の肝障害に対しては、多くの場合食事性蛋白の制限を必要とするがラクツロースの経口投与により蛋白摂取の増量が可能となり、血清アルブミン値の改善が認められた。

 性状:無色〜淡黄色澄明の粘性の液で無臭,味は甘い。

 

<成分>カルメロースナトリウム

E.バルコーゼ 

1. 便軟化作用                     
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は、界面活性作用により硬化便中に水分を浸透させて適度に便を軟化させる。更にカサンスラノールの糞便水和作用も加わって、緩下作用を発揮する。
2. 腸蠕動促進作用
カサンスラノールは、腸蠕動促進作用を有し、その作用は自律神経節遮断剤あるいは抗コリン剤処置により影響されない。したがって、手術時、あるいは抗コリン剤、鎮痙剤、降圧剤等の投与によって引き起こされる腸蠕動運動の低下に対しても腸蠕動促進作用を発揮する。

性状:ジオクチルソジウムスルホサクシネートは白色のろう状又は樹脂状物質で、オクチルアルコールようの特異なにおいがある。本品は吸湿性である。カサンスラノールは黄褐色〜褐色の粉末で、特異なにおいがあり、味はわずかに甘味を有し、後に苦味が残る。

 

<成分> ピコスルファートナトリウム

F.ラキソベロン液 0.75%
ピコスルファートナトリウムは、胃、小腸ではほとんど作用せず、大腸細菌叢由来の酵素アリルスルファターゼにより加水分解され、活性型のジフェノール体となる(ラット)。ジフェノール体は、腸管粘膜への以下の作用により瀉下作用を示す。
1. 腸管蠕動運動の亢進作用(ラット)
2. 水分吸収阻害作用(ラット)

性状:ピコスルファートナトリウムは白色の結晶性の粉末で、におい及び味はない。

 

<成分>センノシド

G.プルゼニド錠 12mg
1.大腸に至り、腸内細菌の作用でレインアンスロンを生成し大腸の蠕動運動を亢進する(マウス、ラット)。
2. プルゼニドの作用は通常投与後8〜10時間で発現する(ヒト)。

性状:淡褐色〜褐色の粒又は粉末で、においはないか、又はわずかに特異なにおいがあり、味はわずかに苦い。

 

<成分>センナエキス

H.ヨーデルS糖衣錠 80mg
1. 投与後、作用部位の大腸に達し、腸内細菌の作用で活性体に変化し、アウエルバッハ神経叢を刺激して大腸の蠕動運動を促進し、緩下作用を発揮する。
2. センナエキスは、ラット空腸、回腸、結腸における水分、Na、Clの吸収を抑制する。
3. 就寝前に服用すると、翌朝に緩下効果が期待される。

性状:黄褐色〜褐色の粉末で、特異なにおいがあり、味はやや苦い。水に混濁して溶ける。

 

<成分>ジオクチルソジウムスルホサクシネート/カサントラノール

I.バルコゾルカプセル

→E参照

 

<成分>クエン酸マグネシウム

J.マグコロールP
腸内容積を増大させることにより効力を発揮する。
1.腸管内への水分移行作用
高張液として投与すると、その溶液は腸管内で等張となるまで体内水分を徐々に腸管内に移行させて腸内容積を増大させる。
2.腸管内の水分吸収抑制作用
等張液として投与すると、その溶液は体内での水分移動を行うことなく腸内容積を増大させる。

性状:クエン酸マグネシウムは白色〜淡黄色の無臭の粉末である。

 

<成分>ナトリウム・カリウム配合剤

K.ニフレック
1. 腸管内洗浄効果
反復経口投与により、ラット(非絶食、絶食及び盲腸切除非絶食)では水様便を排泄して腸管内容物が有意に減少するのが観察され、明らかな腸管内洗浄効果が確認された。同様に、イヌ(16時間絶食)においても反復経口投与により水様便を排泄し、これが次第に透明液となるのが観察され、明らかな腸管内洗浄効果が確認された。
2. 電解質バランスに及ぼす影響
イヌ(16時間絶食)及びラット(24時間絶食)において、血清Na+、Cl-及び血液pHをほとんど変化させず、血清電解質バランスを大きく崩さなかった。またラット(24時間絶食)における尿量及び尿中電解質の変化は、生理食塩液及びBES(balanced electrolyte solution)に比し少なかった。

性状:白色の粉末で、わずかに特異なにおいがあり、味はわずかに塩辛い。なお、溶解後の水溶液は無色澄明である。

L.ムーベン

性状:白色の粉末で、わずかに特異なにおいがあり、味はわずかに塩辛い。なお、溶解後の水溶液は無色澄明である。

 

ちなみに…実際に使ったことがあるのは酸化マグネシウム(カマグ)、マグミット、プルゼニド、マグコロールPである。呼吸状態が悪く、water balanceをかなりunderに持って行っていてもなお、改善しない場合は強制的に排便を図る目的でマグコロールPを使用する。これは、かなり強力な下剤で、味はオレンジジュースのようであるが1/2包を服用するだけでも約一時間後からひどい下痢が始まる。投与後3回以上トイレにかけこむことも珍しくない。であるから、腸内容の減少目的にはeffectiveではあるが、患者さんには嫌われるのでしっかり理由を伝えてから使用することをお勧めする。カマグとマグミットは制酸作用もあるため、胃・腸への効果を期待したい場合は使いやすい薬剤といえる。最後にプルゼニドであるが、これは作用発現時間が8時間前後と長いため、即効性には欠ける。しかし、眠前に服用すると翌朝排便があり、患者さんにとっては爽快感がある、らしい。以上のように作用機序・作用時間・薬剤の形・味など、さまざまな種類があるわけだが、あらゆる意味で患者さんのQOLを高められるように薬剤の使用を考慮していきたい。

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