ネクロノミコン

Necronomicon

架空神話クトゥルフ神話系統を題材とする一連の作品に登場する魔術書。

実在・架空を含めても、もっとも有名な魔術書といっても過言ではない。

伝説や幻のような存在と思われるかもしれないが、設定上はかなりの人物が翻訳しており、この手の本の中では入手はしやすかったりする。
もっとも内容に信頼が置けないものだったり、いくつかの部分が抜け落ちていたり完全なる物はいまだ発見されていない。

初出はクトゥルフ神話の大本である、HPLの小説にて創作された。
架空の書物なのだが、あまりにリアリティが合ったためか実在すると考える人もおり、1946年にニューヨークの古書店がラテン語版ネクロノミコンを販売目録のなかに追加し、新聞で報道される騒ぎとなった。

また1973年、アウルズウィック・プレスが贋作と明言した上でマニア向けにアル・アジフを出版。
これは全ページをアラビア風の無意味な文字で埋め尽くしただけのものであった。

1978年に(1993〜4年に邦訳)、ジョージ・ヘイがジョン・ディー版からの翻訳という設定でネクロノミコンを出版。
ジョン・ディーの暗号文書(これ自体は実在している)をコンピュータ解析によって解読したところ、ラヴクラフトのクトゥルフ神話の内容と合致しており、解読結果と作者や関係者のネクロノミコンに対する所見、解読に至るまでの経緯などと共にネクロノミコン断章と銘打たれて収録されている。
なおこれにはバルザイの偃月刀についての言及もあるが、バルザイはネクロノミコンの執筆よりも後の人物である。
彼は夢の国の住人なので、夢の国と覚醒の世界は時間の流れが違うのか、ネクロノミコンには未来の技術さえ記述されているということなのだろう。
決して後に付け加えられたなどと、夢の無い事を言ってはいけない。

また2004年にドナルド・タイスンがラブクラフトの初期設定に基づき、ネクロノミコン アルハザードの放浪を出版。
ラヴクラフトが作中においてネクロノミコンからの引用として記述した文章を全て収録し、ラブクラフトの設定に忠実な物を製作した。
なお忠実なのはラブクラフト設定に関してなので、他の作家が付け加えた物に関しての再現度は低い。

と、好事家の手で再現などもされたりするほどの人気アイテムであり、クトゥルフ作家などにより設定などをバシバシ追加しまくられているので内容に関しては迷走してるともいえる。

おかげでブックオフで買える魔道書の異名が一部で存在している。

だがそれでも恋のおまじないはないだろう、ネクロノミコン秘呪法よ!!

年表

題名 年代 言語 出版地 コメント
アル・アジフ 730年 アラビア語版 ダマスカス 初版。出版されず、一部にて写本の形で出回っていたという。
アル・アジフ 760年頃 ドゥリアック語版 中東方言言語への翻訳版。
妙法蟲聲經 〜877年? 仏教経典版 唐? ネクロノミコンの仏教経典版。円載が仏像に模した這い寄る混沌の像と共に、日本に持ち込もうとしたと思われる。円載の乗った船は沈没したが、仏像の入った箱だけは日本に流れ着いた事が確認されているものの、本書については行方が知れていない。
ネクロノミコン 950年 ギリシャ語版 コンスタンティノーブル 同地の学者、テオドラス・フィレタスがアル・アジフを発見。ギリシャ語に翻訳されネクロノミコンの題名を付けられる。1692年、最後の一冊が焼失したと言われる。
ネクロノミコン 1100年頃 ブルガリア語版 訳者不明。
ネクロノミコン 13世紀 フランス語版 フランス フランス語版が出回る。
ネクロノミコン 1228年 ラテン語版 ギリシャ語版からのオラウス・ウォルミウス訳。1400年頃にドイツ、1472年にフランス・リヨン、1622〜4年スペインにて出版されている。このうちよく知られているのが17世紀版である。
尸条書 1271年〜1368年? 中国語版 元代に訳されたという中国語版。詳細は不明。日本に流入しているという説もある。
ヴォイニッチ手稿 1300〜1600年? 言語不明の実在の手稿。現在も解読には至っていない。クトゥルフ神話ではネクロノミコンの写本としてネタにされた。
ネクロノミコン 1487年 スペイン語? 異端審問秘書官オラウス・ウォルミウス訳(前述の人物とは同名の別人)発見したネクロノミコンの草稿を翻訳出版した。
ネクロノミコン 1550年 キリル文字でのロシア語版 訳者不明。
ネクロノミコン 1567年 ギリシャ語版 イタリア 訳者不明。
失われた規範の書 1576〜1579年 スペイン語版 アルジェリア ドンキホーテ作者セルバンテスが、虜囚中に翻訳したと推定される。
ネクロノミコン 1586年 英語版

ジョン・ディーによる英訳。ギリシャ語版、ウォルミウスのラテン語版からの素材、ディー自身の注釈が含まれているといわれる。ギリシャ語版からの完全に近い翻訳、僅かに削除部分がある。出版はされず、閉じた世界で出回っている。
サセックス草稿 1598年 英語版 イギリス イギリス・サセックスのフレデリック男爵によるラテン語版からの英訳版。正式名は悪の祭祀。信頼性は低い。
ネクロノミコン 1641年 ゴート語版 キンドラーの著書にてゴート語版のネクロノミコンが言及されるが発見されず。1944年にナチスが発見したという説がある。
アラブの祈りの書 1848年 ドイツ語版 バイエルン フォン・ユンツト訳。
屍龍経典 1861〜1908年 中国語版

中国語版。清代末期に翻訳される。これを読んだ西太后はおぞましさのあまり翻訳者を処刑したという。清朝崩壊の際に日本に流出。
ネクロノミコン新釈 1901年 英語版 ヨアキム・フィーリー著。ネクロノミコンを再構成したガイドブックのようなもので信頼できる内容とはいえない。小冊子にすぎず、完全版と短縮版がある。
ネクロノミコン 1916年 英語版 アレイスター・クロウリー翻訳。限定的に販売された。という設定。
ネクロノミコン 1928年 ロシア語版

スターリンが発見。自分用に翻訳させた。
ネクロノミコンにおけるクトゥルフ 1938年 英語版 ラバン・シュリュズベリィ博士による未完の草稿。ネクロノミコン、ルルイエ異本にて言及されるクトゥルフ神話と他神話の関連などが考察されている。
ネクロノミコン 1956年 英語版 イギリス ヘンリエッタ・モンターグが大英博物館の依頼により英訳。削除部分があるが、研究目的用に出版された。
注釈付きネクロノミコン 1965年 英語、ラテン語 ミスカトニック A・フィリップ・ハイガス訳。英語・ラテン語併記、ミスカトニック大学出版局からの出版。
シモンのネクロノミコン 1975年 英語版 修道士シモンによる、主に旧神の召喚方法に付いて書簡化された一冊。アレイスター・クロウリー生誕100周年記念に限定販売された。
ネクロノミコン断章 1978年 英語版 ジョージ・ヘイがジョン・ディー版から翻訳。1990年代に大瀧啓裕によって邦訳版も出版される。2007年に完全版の邦訳が出版された。
ユダヤの禁書 ネクロノミコン秘呪法 1988年 日本語版 日本 完全なる偽書であり、創作おまじない集である。一説にはシモンのネクロノミコンが元ネタだともいわれている。
ネクロノミコン 2004年 英語版 ドナルド・タイスン訳。2006年に大瀧啓裕によって邦訳版も出版される。