色素失調症は、遺伝子の変化で起こる病気です。遺伝子の病気は、決まった法則に従って次の世代に伝わります。色素失調症が遺伝することと家族の計画について考えます。「遺伝のしかた」では家族や親族の中に色素失調症の方がいる場合、次の世代に色素失調症がどのように遺伝するのか、遺伝しないのかを説明します。「結婚・妊娠・出産すること」では、色素失調症の方が結婚・妊娠・出産について悩んだときにどうすればいいのかを一緒に考えます。
色素失調症は母親から子どもに伝わります。色素失調症の女性は、健康な男の子、健康な女の子、病気の男の子、病気の女の子を妊娠します。それぞれを妊娠する確率は約25%です。ただし、色素失調症の男の子を妊娠した場合、ほとんどが流産します。色素失調症の男の子でも、「クラインフェルター症候群」の場合や、「体細胞モザイク」の場合などは生まれます。また、色素失調症の原因となる物質が減少するタイプの変異の場合も生まれます。従って、実際に生まれる割合は、健康な男の子約33%、健康な女の子約33%、病気の女の子約33%、ごくわずかの病気の男の子となります。
体細胞モザイク型の色素失調症の男性の場合、「体細胞」という体の細胞は、正常な細胞と病気の細胞が混ざり合った状態ですが、精子を作る細胞である「生殖細胞」はすべて正常です。従って、体細胞モザイクの色素失調症の男性からは、色素失調症の子どもは生まれません。色素失調症でクラインフェルター症候群の男性は、クラインフェルター症候群のために男性不妊となります。
子どもの母親が健康な女性の場合
第1子が色素失調症で、母親が健康な場合、第2子や第3子が色素失調症である確率は、突然変異で色素失調症が生まれる5万人に1人つまり0.002%です。つまり、患者さんが突然変異の色素失調症の場合、その母から生まれる他のお子さんが色素失調症であることはほとんどないといえます。
子どもの母親が色素失調症の場合
第1子と母親が色素失調症である場合、第2子、第3子への伝わり方は、健康な男の子、女の子、病気の男の子、女の子ともに約25%、生まれるのはそれぞれ約33%ずつ、病気の男の子は流産する、というのは、第1子も第2子も第3子も同じです。また、第1子が色素失調症なので第2子は必ず健康だ、というのは誤りです。その逆の第1子が健康だったので、第2子は必ず色素失調症だ、というのも誤りです。母親が色素失調症なら、妊娠のたびに子どもが色素失調症である可能性はありますし、健康な子どもが生まれる可能性もあります。
母親の姉妹つまり伯母・叔母やいとこが色素失調症であっても、母親が色素失調症でない限り、子どもに伝わることはありません。色素失調症は、母親から子どもに伝わります。母親が色素失調症でなければ、子どもは色素失調症になることは、ほとんどありません。“ほとんどない”というのは、突然変異で生まれてくることあるけれども、それは一般の人と同じ5万人に1人ということです。ただ、母親がとても軽症の色素失調症だったので、症状があったことに気が付いていない、ということもあります。
あなたが色素失調症で、結婚したいと思う人が現れたとき、色素失調症のことを相手の方に話しますか?話さないでおきますか?どうするかは人それぞれかもしれません。非常に軽い方だったら話さないでも問題ないかもしれませんし、相手に全部知ってもらってから結婚したいと思う方もいらっしゃるでしょう。また、結婚して落ち着いて、子どもをどうするか、という頃になってから、話す方法もあるかもしれません。色素失調症であることを相手に告げるかどうか、告げるのならいつ告げるのか、考えなくてはならないときがくるかもしれません。一人ではなかなか決められない、というとき、信頼できる相手に相談することや、いろんな年齢の色素失調症の方と話すことなどは、自分で決めるための手掛かりになります。
色素失調症の方にとって妊娠と出産は不安に感じられ、ためらわれる方もいらっしゃるでしょう。中でも一番心配なのは何でしょうか?そして、それはなぜでしょうか。流産することでしょうか?男の子が生まれにくいことでしょうか?生まれてきた子どもが色素失調症であることでしょうか?妊娠や出産について不安に思うこと心配に思うことを考えて心の中を整理することは、将来の家族を計画する上での第一歩となります。同時に、妊娠し無事出産したあとの、子どものいる生活を考えてみることも大切なことでしょう。色素失調症で生まれてきても、本人も気づかないぐらい軽症の方もいらっしゃいますし、多くのお子さんはすくすく元気に育っていきます。現代の医学でも色素失調症自体を治すことはできませんが、症状に対してできることは多くあります。色素失調症について学んだり、専門家に相談したり、同じ立場の方と気持ちを共有することで、安心感が得られます。そして、それらは将来のことを前向きに考えるための心の基礎となることでしょう。
まず、妊娠したら検診を受けましょう。担当の医師にご自身が色素失調症であることを伝えることが必要です。赤ちゃんが病気だった場合、男の子は流産しやすいことも伝えましょう。その上でどのように経過を見ていくかを医師と相談しましょう。赤ちゃんが女の子の場合や健康な男の子の場合の妊娠出産の経過は通常と同じです。一般的な産院で、安心して妊婦健診を受け出産できます。病気の子どもが生まれたときどのように対処するかは話あっておきましょう。お母さん自身が生まれたときの症状が参考になるかもしれませんので、わかるのなら伝えましょう。前もって医師に病気の情報を伝えることによって、もし生まれたお子さんが色素失調症の場合に、早期に適切な治療を受けることができます。
あなたが赤ちゃんを思う気持ち、感じた気持ち、つらい気持ちを自分自身で認め、体と心が回復するのを待ちましょう。パートナーに話すことで、気持ちが癒えるかもしれません。遺伝子が変化することしないこと、それが子孫に伝わること伝わらないこと、生まれてくる赤ちゃんがいること、生まれてこられない赤ちゃんがいること、すべては自然の営みの中にあることであり、偶然で決まることです。決してあなたのせいではありません。あなたが色素失調症であっても、子どもをもちたいと思う気持ちは、とても自然で当たり前のことなのです。あなたの生まれてこなかった赤ちゃんも、これから生まれてくる赤ちゃんも、みんなあなたの大切なお子さんです。自分自身を肯定しながら、心と体が回復するのを待ちましょう。
生まれたお子さんが色素失調症と診断されたら、これからどうなるのか不安を感じられるかもしれません。色素失調症の場合、皮膚の症状はやがて消えていきます。それ以外の変化はないこともありますし、あってもわからないぐらい軽いこともあります。多くのお子さんは、すくすく元気に成長していきます。お子さん自身の成長する力を見守り、医師と相談しながら症状に対してできることをしてあげて下さい。遺伝であっても、突然変異であってもお子さんが色素失調症で生まれてくることは、誰のせいでもありません。
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詳細はトップページにあります。(2020.1.2)
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GeneReviews®は医療関係者向けの遺伝性疾患情報サイトです。米国国立衛生研究所などの後援のもとワシントン大学によって運営されています。GeneReviews®の色素失調症の項を翻訳をしました。
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「色素失調症」