皮膚の症状は生後2週間以内に始まります。症状は時間の経過とともに変化し、次の4期に分けられます。各期はオーバーラップしながら現れます。現れない段階もありますし、各期の長さには個人差があります。皮膚の症状は、ほとんどの方に見られます。
出生時または生後2週間以内に紅斑が現れます。紅斑は青紫にみえることもあります。ブラシュコ線(受精卵が赤ちゃんに成長するときに皮膚の細胞が増えた方向を示す線)に沿って現れます。紅斑と水疱は患者さんの約90% 13) に現れます。腕や脚では線状で、体幹では円周状であることが多いです。数日以内に紅斑上に小さな水疱が生じます。水疱は、多くは数日から数ヶ月続き、遅くても1歳半までには消えます。まれに数年後、発熱やウイルス感染をきっかけにして、紅斑と水疱が再び始まることもあります 13) 。
(⇒ ブラシュコ線とは何ですか?)
第1期が消失し始めるころ第2期が始まります。水疱は乾燥し、角化しながら、疣状の発疹に変化し、継続します。膿疱性発疹(膿がたまる発疹)のように見えます。発疹は、ブラシュコ線に沿っていて、腕や脚では線状で体幹では円周状です。生後数ヶ月以内にこの段階になり、数ヶ月続きます。お母さんのおなかの中で発症した場合は、出生時にこの期であることもあります。
水疱が消え始めるころ、灰褐色か灰青色の色素沈着が現れます。水疱があった場所にもなかった場所にも現れます。色素沈着はブラシュコ線に沿っています。色素沈着は生後6か月から1歳の間に始まり、多くは第2期が消失し始めるころ現れます。色素沈着は数年続き、多くは10代から20代の初めには消えますが、消えない場合もあります。軽い萎縮を伴い脱色することもあります。色素失調症の症状の中で最も特徴を表す時期です。
第3期の色素沈着が消える前に、血管が少なく汗腺と毛根がなく、細かな波状の脱色した皮膚がふくらはぎ後部や腕に現れます。90%の患者さんに見られ、成人になっても消えません。日光によって他の皮膚が焼けた後目立つこともあり、その反対のこともあります。30代以降の患者さんには新たな皮膚変化は見られません。
目に変化があるのは、患者さんの30.5%です 28)。多くの患者さんは視力に問題がありません。目の内部(網膜)の血管の形成に問題があることがあります。網膜の周辺部に新生血管ができると、網膜剥離を起こしやすくなります。網膜剥離が起こりやすいのは6歳までです。これ以外では、斜視、白内障、小眼症、視神経萎縮などがみられることもあります。
歯に変化があるのは、患者さんの43.5%です 28) 。歯が生えるのが遅かったり、乳歯や永久歯の一部が生えてこないことがあります。歯茎には歯があるものの生えてこなかったり、歯が小さかったり、円錐状の歯であったり、副咬頭(歯の左右に小さな突起がある歯)の場合もあります。乳歯に問題がなくても、永久歯に症状があることもあります。エナメル質と強度は一般の方と同じです。
毛髪に変化があるのは、患者さんの26.6%です 28) 。頭髪がまばらであったり、脱毛したりします。脱毛は、頭皮の皮膚病変のあった部位に起こりますが、病変がなかった患者さんでも起こります。小児期には頭髪が細くまばらでも、成長につれ目立たなくなります。光沢がなく針金状であることもあります。脱毛した部分が小さいと患者さん自身、気が付かないこともあります。睫毛や眉毛がまばらになることもあります。
爪に変化があるのは、患者さんの14.6%です 28) 。爪が縦に隆起したり、凹んでいたり、分厚くなったりします。症状は足や指の爪のほとんどかすべてに現れ、軽く一時的なことが多いですが、繰り返すこともあります。爪の下に角化症の腫瘍がみられることもあり、皮膚の第2期の疣状発疹と一致します。腫瘍は指の骨の変形を伴うこともあります 12) 。
関節の可動域が小さくなること、脱臼、脊骨の弯曲など骨の変化があることもあります 。
患者さんの中には、神経に変化のある方もいます。痙攣発作のある方や、ゆっくり発達するお子さんもい ます。
ときに色素失調症が、新生児期から乳児期早期に、急性脳炎脳症様のような発症の仕方をすることがあります。そんな時も、あせらず、落ち着いて医師の指示に従いましょう。
(⇒ 脳梗塞を伴う急性脳炎脳症について)
色素失調症の女性が健康な赤ちゃんを妊娠した場合、妊娠と出産の経過は通常と同じです。一般的な妊娠のしやすさも通常と同じです。色素失調症の男の子を妊娠した場合、多くは流産します。流産するのは妊娠3ヶ月から4ヶ月のことが多いです。
(⇒ なぜ男の子は流産になるのですか?)
新生児期や乳児期に重い合併症がない場合、患者さんの平均寿命は一般の方と同じです。皮膚や目や歯の変化が落ち着いた後は、経過は良好です。
色素失調症の男の子を妊娠した時は、流産しますが、次の3つの理由によってわずかながら色素失調症の男の子が生まれます。
色素失調症かつクラインフェルター症候群である場合生まれます。一般の男性はX染色体を1本なので、X染色体が色素失調症になる変化をすると生きていけません。しかし、クラインフェルター症候群の男性はX染色体を2本以上持つので、片方が機能失っても、もう片方が代わりに働くことができるので生まれます。
クラインフェルター症候群とは?
通常の男性の性染色体は(XY)、女性は(XX)ですが、クラインフェルター症候群の男性はXを過剰に持ちます。
(⇒ 染色体とは何ですか?)
(⇒ X染色体とは何ですか?)
一般的な色素失調症の場合はすべての体の細胞の遺伝子は変化していますが、体細胞モザイクの色素失調症の場合は、体委の細胞が正常な細胞と変化した細胞が混ざり合っています。正常細胞が混ざることで、症状は軽めになります。
(⇒ モザイクとは何ですか?)
色素失調症になる原因の物質の働きが完全になくならず、働きが減るものの失われていない状態であるような場合の男児は生まれてきます。
LINEで患者さんとご家族の方とお話ができます。参加希望される方は、メールでご連絡下さい。
詳細はトップページにあります。(2020.1.2)
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GeneReviews®は医療関係者向けの遺伝性疾患情報サイトです。米国国立衛生研究所などの後援のもとワシントン大学によって運営されています。GeneReviews®の色素失調症の項を翻訳をしました。
⇒ GeneReviews 日本語版
「色素失調症」