金銭消費貸借契約と公正証書 |
金銭の一定額の支払いを内容とする公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは債務名義となり執行力を有します(民事執行法22条5号)。 金銭消費貸借について公正証書を作成しておくと、借主が返済の約束を守らなければ、直ちに強制執行をすることができます。 金銭消費貸借契約は、借主が現実に金銭を受け取ることが必要な「要物契約」ですから、金銭の授受がなされたことを明確にしておく必要があります。 元金について、確定の期限に一括して支払うのか、毎年又は毎月の分割払とするのか、また、分割払の場合は、支払期間(回数)と一回の支払額のほかに、毎年又は毎月の何日に(毎月末日限り等)支払うのかなど、弁済期を明確にしておきます。 また、利息についても明確にしておく必要があります。 特に元利均等分割払(元金と利息を合わせた一定額を月々支払う方法)をとる場合には、月々の支払額の元利の内訳と残元金の金額を明確にした「元利均等返済表」を作成し、証書に添付しておくと便利です。 |
利息の定めと利息制限法による上限利率 |
金銭消費貸借では、通常、利息支払の約定をしますが、それと同時に多くの場合、遅延損害金の割合も定めます。 利息の上限利率と、遅延損害金の上限利率は次のとおりです。 営業的金銭消費貸借の場合の上限利率は20%です。 いずれも、その超過部分は無効となります。 |
【利息の上限利率】 元本額が10万円未満:利息の上限利率 年20% 10万円以上100万円未満:年18% 100万円以上:年15% |
【営業的金銭消費貸借の場合】 元本額が10万円未満:利息の上限利率 年20% 10万円以上100万円未満:年20% 100万円以上:年20% |
【営業的金銭消費貸借以外の場合】 元本額が10万円未満:利息の上限利率 年29.2% 10万円以上100万円未満:年26.28% 100万円以上:年21.9% |
債務承認・弁済契約と公正証書 |
債務者が債権者に対して、契約や不法行為などによって生じた債務を確認(承認)し、その履行を約束する契約です。 これらの契約について公正証書を作成しておくと、債務者が支払いの約束を守らなければ、直ちに強制執行をすることができます。 債務発生原因が契約である場合は、原契約とは別の履行契約になります。 債務弁済契約において、弁済すべき債務は、同一当事者間に他の債務と誤認混同のおそれがない程度に特定する必要があります。 通常は、債務の性質、発生時期、回数等によって特定します。 |
公正証書を作成するには |
必要書類(債権者、債務者、連帯保証人に共通) ①「印鑑登録証明書」と「実印」 ②「顔写真付き公的身分証明書」(運転免許証など)と「認め印」 ①~②のうち、いずれかをご持参ください。 ③「収入印紙」 公証役場では、高額の収入印紙は用意していませんので、事前にご用意ください 。 なお、近隣の荘島郵便局でも購入することができます。 公正証書に記載された契約金額に応じた印紙の額は以下のとおりです。④代理人が来る場合 ・委任者からの「委任状」(委任者が実印を押印したもの) ※法人の場合は、法人代表者印を押印したもの ・委任者本人の「印鑑登録証明書」 ※法人の場合は、法人の「印鑑証明書」と「登記簿謄本」 ・代理人の「顔写真付き公的身分証明書(運転免許証など)+認め印」 やむを得ず代理人が来られる場合は、委任内容を明確にした詳細な「委任状」が必要です。 「委任状」のサンプルは、左記のダウンロードからご利用いただけます。 |
公正証書の作成手数料について |
公証人が受け取る手数料は、政令(公証人手数料令)で定められています(詳しくは「手数料について」のページをご参照ください)。 金銭消費貸借契約 貸主が金銭を貸し渡し、借主が借入金の返済を約束することによって成立する契約ですから、借入金額が法律行為の目的価額になり、これに応じて手数料が決まります。 従たる契約である利息は、目的価額に含まれません(手数料令15条)。 債務弁済契約 既に存在している金銭債務の支払方法を定める契約で、金銭消費貸借と同じく、支払金額のみが法律行為の目的価額になり、これに応じて手数料が決まります。 担保権設定契約 抵当権などの担保権設定を目的とする契約の目的価額は、担保の目的の価額又は担保される債権の額のいずれか少ない方になります。 ただし、抵当権などの担保権設定を目的とする契約を、担保される債権に係る金銭消費貸借契約とともに公正証書にする場合は、その金銭消費貸借契約の債権額に、その債権額又は担保となる物件等の価額のいずれか少ない額の2分の1を加えたものが目的価額となります(手数料令23条2項)。 連帯保証契約などは、担保される債権に係る契約との関係では、従属的法律行為ですから、金銭消費貸借とともに公正証書が作成される場合には、金銭消費貸借の債権額のみが目的価額となります(手数料令23条1項)。 抵当権の設定も、従属的法律行為ですが、手数料令23条2項は、特に例外的規定を設けたものです。 なお、根抵当権設定は、主たる債権に従属しない法律行為ですから、金銭消費貸借などとは別個の法律行為として、手数料の対象となります。 |