コロナウィルスを共に乗り越えましょう

「雨ニモマケズ」

雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ 丈夫なからだをもち 慾はなく 決して怒らず いつも静かに笑っている 一日に玄米四合と 味噌と少しの野菜を食べ あらゆることを 自分を勘定に入れずに よく見聞きし分かり そして忘れず 野原の松の林の陰の 小さな萱ぶきの小屋にいて 東に病気の子供あれば 行って看病してやり 西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い 南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくてもいいといい 北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろといい 日照りの時は涙を流し 寒さの夏はおろおろ歩き みんなにでくのぼーと呼ばれ 褒められもせず 苦にもされず そういうものに わたしはなりたい

 

南無無辺行菩薩 南無多宝如来 南無妙法蓮華経 南無釈迦牟尼仏 南無浄行菩薩 南無安立行菩薩

 

合掌 新型コロナウィルスが流行している中、私達は、思わぬ人間の本性が顕れるのをみることになりました。自粛警察、マスク、医薬品の買い占め、トイレットペーパー不足、県外ナンバー刈り、感染症専門家やマスコミ、コメンテーターの必要以上の煽り、恐怖心の植え付け、感染者の差別、職業の差別、GO TO キャンペーン批判などキリがないくらいです。これは仏教で言う貪欲(執着心) 瞋恚(怒り)愚痴(デマ、煽る)の3毒毒です。人間の心持ちで霊山浄土にも地獄にも変わるのです。本来、私たちは自分で考えて、適度な行動の制限ができておりました。しかし、情報の氾濫により、人口の数%の人間の行動を多数派と勘違いして、社会を疑心暗鬼で捉えております。
いまこそ、仏教の精神が必要ではないでしょうか。仏教の基本は中道です。やりすぎてもダメ、やらなくてもダメ、何事も適度なのがいいと言う教えです。(だいぶ大雑把ですが)
先に記した、宮沢賢治さんの「雨ニモ負ケズ」は法華経の精神を表した詩です。新型コロナウィルス感染拡大の中、この詩のような心持ちでいられたら、この世界は慈悲にあふれ、霊山浄土に変わるのではないでしょうか?
宮沢賢治さんは1896年(明治29年) 8月27日、岩手県里川口村(後に花巻川口町から花巻町を得て、現・花巻市)で生まれました。浄土真宗である父祖伝来の濃密な仏教信仰の中で育ち、質屋の息子であった賢治は、農民がこの地域を繰り返し襲った冷害などによる凶作で生活が困窮するたびに家財道具などを売って当座の生活費に当てる姿をたびたび目撃、これが賢治の人間形成に大きく影響しました。やがて『漢和対照妙法蓮華経』と読み、体が震えるほどの感銘を受けました。これが宮沢賢治と法華経と日蓮宗との出会いだったのです。
今、私たちの暮らしの中で忘れてしまっている大切なこと、無私、無欲、自己犠牲といった心を思い起こさせてくれるのが「雨ニモマケズ」なのではないでしょうか。私たちは、自然災害、疫病など、抗うことができないことが多くあります。情報は智識(仏の智慧)に変え、正しく理解をして、この法華経の信念を保ち、心の安寧を得て、新型コロナウィルスを共に乗り越えていきましょう。皆様に頂いた功徳は、ご先祖様はもとより、娑婆世界を救ってくださると信じております。再拝

 

※令和2年8月お盆の法話です。

日蓮宗 顕正寺 住職 吉田本晃