お彼岸も近づいてまいりました。新型コロナウィルスが蔓延して緊急事態宣言まで発令されましたが、最近は情勢も落ち着いてまいりました。医療従事者に限らず、飲食、教育、ソーシャルワーカー、多くの人びとが、苦労を強いられた事と思います。令和二年度の十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・癸・壬)十二支(子・牛・寅・兎・辰・巳・午・羊・申・酉・戌・亥)で見ますと、庚(かのえ)子(ね)の年でございました。庚は更新の意、草木の成熟が止まり、新たなものに変化することです。子年は了と一、終わりと始まりの意です。これは世の中の常識が一変して、新たな時代が来ることを意味しております。
そのことを踏まえれば、新型コロナウィルス感染の状況下、新たな生活様式や、働き方改革、三密等、新たな社会の常識が出来のだと思います。新しい社会常識ができたからといって、過去の常識や、生活や働き方をすべて否定するのもおかしな話です。新型コロナウイルスの正体は、大体解ってきたところです。ワクチンや薬も出てまいりました。正体が解かれば対応ができます。しかし、人の心の醜いところも出てきました。過剰な煽る報道や、自粛警察や、僻み、嫉み、疑心暗鬼など、ワクチンや薬では、治らないものも出てまいりました。
私たちは、完璧ではありません。この社会情勢にあって、すべてを受け入れられた方は、少ないと思います。その心のモヤモヤを解決するのが、先祖供養であり、ご回向なのです。心のワクチンといってもいいかもしれません。ご回向するということは先祖供養では大切なことです、心を、ご先祖様に回らし(めぐらし)向けるということなのです。
自分にとっては祖先が一番の身近なものであり、ご先祖様が成仏していれば、一家の守り神となります。ご先祖を持たない人は一人もおりません。自分に繋がる父母、祖先、十代遡れば1024人にもなります。このうち、一人でも欠ければ、今の自分の存在はありません。それゆえに、ご先祖のどの一人をとっても、自分には掛け替えのない存在です。ただし、ご先祖様の中には、徳のあった人も、自分自身が救われなければならない状況の人もいたことでしょう。その全てのご先祖を成仏の方向へ向かわせることができれば、これ以上の孝行、孝養はありません。そうなった時には、ご先祖様は我々子孫を御守護してくださる「守り神」となるのです。
日蓮宗 顕正寺 住職 吉田本晃