児玉教育研究所-症状別の心理療法 統合失調症

logo825.jpg

症状別の心理療法

統合失調症
統合失調症は、思春期から青年期にかけて発病しやすく、誰もいないのに人の声が聞こえる「幻聴」や、電車の中や近所の人が自分の悪口を言っているといった「関係妄想」、自分は常に周囲の人から監視されているといった「観察妄想」などの「妄想」、また自分の考えがすべて周りの人に筒抜けになっているといった「思考伝播」などの「思考障害」など特有な症状を示し、大むね社会から引きこもって、正常なコミュニケーションが取れなくなる障害です。

「統合失調症」は1911年にスイスの精神医学者オイゲン・ブロイラーによって命名され、長く精神科医療の中心になってきた病気です。1952年に抗精神病薬クロルプロマジンが開発されて以来、薬剤の進歩が著しく、現在では、クロザピンの研究に始まる「非定型薬」が開発され、リスペリドンやオランザピンといった新しい治療薬が流通し、治療効果を挙げています。統合失調症に薬物療法は不可欠です。

しかし、統合失調症は同時に対人関係の障害でもあり、集団や対人関係がストレス要因となって発病や再発が起こる「ストレス-脆弱性」といわれる人格の特徴をもっています。対人関係でのささいな出来事や葛藤によって深く傷つき、それがいつまでも尾を引くために、生活上、精神上のリズムを崩し、入退院をくり返す「回転ドア現象」と呼ばれる現象もよく見かけられます。

こうした事を防ぐには、まず対人関係のストレスを溜めないことが大切です。また統合失調症の患者は「病識がない」といわれ、自分のどこが病気なのか自覚のない人もよく見かけられます。更に統合失調症の患者には、元々、内閉性、過敏性、非社会性などの性格特徴があり、それが対人関係や社会適応の大きな障害になっています。こうした点を改善するためには薬物療法と共に心理療法が必要になります。

安心できるセラピストとの対話の中で、対人関係でのストレスについて話し、自分の症状について振り返り、これまでの人間関係や集団生活で思うようにゆかなかった事などを自由に話してゆきます。この場合セラピストは、あまり心の傷に触れたり、感情面を刺激したりせず、支持的な態度でクライアントの内的世界を理解しょうと努めます。心理療法を進めてゆくと、クライアントは次第に自分自身の病気の症状や性格、対人関係などについて体験的に理解するようになり、感情表現力も身についてゆきます。他人の感情を理解する力も少しずつついてゆきます。こうしたことが徐々に服薬の遵守や再発予防につながってゆきます。

これまで色々な統合失調症患者の心理療法をおこなってきましたが、軽症の場合には目に見えて社会適応力が増すケースも少なくありませんでした。また集団心理療法と併用する事で対人関係の能力がより向上するケースが見られました。