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  1. 異型腺種様過形成(AAH)とその病理組織の特徴
  2. 創傷治癒とサイトカイン
  3. 原発性肺癌:扁平上皮癌の病理組織の特徴
  4. 胸部X線の見方
  5. 鉄欠乏性貧血の治療
  6. Hugh−Jones分類
  7. 胸腔ドレーン抜去法
  8. ステロイドとその力価
  9. 食道癌の肺転移における長期予後について
  10. 肺癌診療における腫瘍マーカー

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研修医宿題

異型線種様過形成とその病理組織の特徴


原田 憲一


異型線種様過形成(AAH)は,肺胞II型上皮細胞あるいは細気管支線毛上皮細胞(クララ細胞)類似の細胞からなる腫瘍であり,肺末梢の限局性病変である.近年、末梢型線癌の前癌病変としての性格を持つ病変として注目されている。同義語として、異型肺胞立方細胞増生、異型肺胞細胞過形成、細気管支肺胞線種などがある.

AAHは原発性肺腺癌のため切除された肺の病理学的検索の際に偶然見つかるものが多い.切除肺の検索により,原発性肺癌の5.1%,腺癌の7.8%でAAHが発見されている.肉眼的には,径1-10数mm大の灰白色の境界不明瞭な結節病変である.多発性のこともある.また腺癌の周囲に連続して認められることもある.組織学的には,立方状あるいは低円柱状の細胞が既存の肺胞隔壁に沿って肺胞上皮を置換しながら1層に増殖するタイプと非置換性に増殖するタイプとがある.細胞は,正常の肺胞II型上皮細胞や細気管支無線毛上皮細胞より大きく,核の腫大と大小不同・形状不整・クロマチン増量などの異型性が様々な程度に認められる.高分化腺癌に見られるような核内封入対が認められることもある.核分裂像はほとんど認められない.免疫組織学的には表面活性物質アポ蛋白陽性が認められる.電子顕微鏡的観察では細胞は肺胞II型上皮細胞あるいはクララ細胞に類似する.肺胞隔壁は種々の程度に肥厚する.

鑑別すべき病変として

(1)炎症に伴う肺胞II型上皮細胞の反応性増生や細気管支上皮化

(2)腺癌の肺内転移

(3)微小肺腺癌が挙げられる.

(1)とは病変の境界が明瞭であること,炎症細胞浸潤が乏しいこと,異型性をしめすこと,線毛細胞の混在がないことが挙げられる.(2)との鑑別は核異型の程度からそれほど困難ではない.(3)との鑑別は核異型の程度,細胞密度・増殖の程度,肺胞隔壁の肥厚の程度,病変の大きさといった所見に基づかれるが,必ずしも容易でない場合もあり,最終的には経験的・主観的な判断に委ねられることになる.

最近小型肺腺癌の分類に関して話題を集めているものに,Noguchiらのhistologic typingがある.これは肺腺癌を腫瘍の増殖パターンより次の6タイプに分類している.TypeAは薄い基質を伴って,肺胞上皮を置換する増殖を示す細気管支肺胞上皮癌である.TypeBは肺胞の虚脱に線維化病変を認める限局性の細気管支肺胞上皮癌である.TypeCは過半数を占める最大のタイプで線維芽細胞の増殖が著明である.TypeDは低分化腺癌、TypeEは腺管型腺癌、そしてTypeFは圧排性および破壊性に増殖する乳頭型腺癌である。TypeAとTypeBにはリンパ節転移はなく,最も良好な予後を示した.TypeAとTypeBはin situの末梢腺癌と考えられ,一方TypeCはTypeAとBが進行した段階である.逆にTypeD,E,Fは予後が不良な小型進行腺癌である.Thin-sectionCTは小型腺癌の肺胞上皮置換部分を反映している.

Feb 24, 2004

 

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