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  1. Respiratory Index (その2)
  2. Respiratory Index (その3)
  3. 肺動脈閉塞試験
  4. 抗悪性腫瘍剤の血管外漏出時の対策
  5. 頻脈発作の治療
  6. 局所麻酔薬の基礎知識(その2)
  7. 酸素マスク
  8. PT・APTT
  9. カテコールアミン
  10. 不眠薬・睡眠薬の使い方

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研修医宿題

抗悪性腫瘍剤の血管外漏出時の対策


水田 有紀

抗がん剤の中には、血管外にもれると難治性皮膚潰瘍などの重篤な皮膚障害を引き起こすものがある。特に、全身状態が低下していたり、気温や脱水などの状態や放射線療法などの影響で発症しやすくなるため、注意が必要である。以下に血管外漏出時の対策を挙げる。

【一般的な処置】(漏出が明らかな場合、または、漏出が疑わしい場合)
・まず保存的に薬物療法
・効果がない場合は外科的療法

 点滴中であればただちに抗悪性腫瘍剤の投与を中止し、血液(約5mL)を取り、組織に浸澗している薬剤をできる限り回収する。主にチューブ内の薬液回収を行う。

A さらに浸澗している薬剤を回収するため、腫脹を認める部位に針を刺し注射器で吸引、除去する場合もある。

B 壊死性抗悪性腫瘍剤・炎症性抗悪性腫瘍剤の場合には、漏出の多少にかかわらず、炎症予防のために、発症直後に副腎皮質ホルモン剤の局所投与が有効とされている。(可能ならば1時間以内に処置をする)*ビンカアルカロイド:ステロイドの使用に否定的な報告もあり。

漏出範囲よりも大きく、かつ中枢に向かって範囲を広げてまんべんなく何回も皮下に局注
例1 リンデロン 4〜8mg
またはデカドロン 4〜8mg
または水溶性プレドニン 50〜100mg
生食または1%キシロカインで総量4〜8mLに調整
参考文献4
例2 ソル・コーテフ 100〜200mg
またはリンデロン 4〜8mg
生食適当量+1〜2%塩酸プロカインまたは塩酸リドカインで総量5〜10mLに調整
参考文献5

局所注射後,患部にステロイド軟膏を塗布し0.1%アクリノール液にて1日2回,症状が全く消失するまで湿布を行う.また感染の恐れがあるときは抗生物質の投与も考慮する.
  *アクリノールの使用目的
   血清蛋白の存在によって作用が減弱されない
   粘膜刺激がほとんど無く、傷の深層部まで殺菌することができる
   アイシング効果(患部の熱をとる)がある
   傷面がふさがりにくい欠点があるので、長期間は使用しない

C 漏出部位は圧迫せず、一般的には保冷もしくは(薬剤により)保温する。
  氷冷法:15分、1日4回、3日間
*保温は、漏出薬剤を分散することにより組織への吸収を促進する目的と考えられるが、肯定的な意見は少ないようである。(私見)   
*ビンカアルカロイド(エクザールを除く):加温を勧める報告もあり

D 患部の安静・挙上を約2日間保ち、症状の改善を図る。

E 頻繁に漏出部位を観察する。遅発性の組織障害を呈する場合もあり、最低1週間は観察を要する。

【漏出後、処置開始まで時間が経過した場合】
  漏出後、一週間以内であれば、上記Dの処置が効果がある場合もある。

【解毒剤について】
  漏出薬剤によっては解毒剤の使用も検討されているが、効果が明確でなく、また販売されていない薬剤(例:ヒアルロニダーゼ)もあり、あまり積極的には使用されていない。

以下、参考までに血管外漏出予防および抗がん剤の皮膚障害程度の分類を挙げる.

【抗悪性腫瘍剤の血管外漏出予防】
  薬液は出来るだけ希釈する。(特に起壊死性の薬剤)
  前回静脈穿刺した部位や手背部・手関節部等からの投与は避ける。
  抗悪性腫瘍剤を接続するときは、必ず血液の逆流を確かめる。
  針・延長チューブ・三方括栓など、輪液ルートの接続部が外れないようにループをつくりしっかり固定する(この際、穿刺部位の状態が見えるようにしておく)。
・注射針は、シリコン処理したものははずれやすいので、非シリコン処理のものが望ましい
  投与中は血液の逆流を確認し、刺入部位や滴下の状況・血管痛の有無を観察する。
  投与中,血液の逆流の確認ができない時や刺入部の発赤・疼痛・硬結など異常を認めた時は、抗悪性腫瘍剤の漏出が疑われるのでただちに投与を中断し、医帥に報告して速やかに適切な処置を行う。

【抗がん剤による皮膚障害の程度】

Vesicant drug
(高度)
ACT-D,ADM,DNR,EPI,MMC,THP-ADR,VCR,VDS,VLB,TAXOL
Irritant drug
(中等度)
ACR, BHAC, BLM, CBDCA,CDDP,TXT,CPA,CPT-11,CQ,MIT,DTIC,5-FU,IFX,MCNU,PEP,254-S,TEPA,VP-16
non-Vesicant drug
(軽度)
ACNU,Ara-C,L-ASP,FT,IFN,IL-2,MTX

参考文献
1)がん化学療法の有害反応対策ハンドブック 改訂版P276-284:吉田清一監修:先端医学社
2)SkinCancer Vol.7No.1 1992P117-128(抗がん剤の血管外漏出)
3)がん看護マニュアル改訂版(ナーシングマニュアル1)P221-226:日野原重明総監修:学研
4)制癌剤の血管外漏出の予防と処置:癌治療と宿主Vol2No2.1990-4:P27-35
5)抗癌剤副作用対策の実際:土屋了介監修:日本化薬
6)抗がん剤の血管外漏出とその対策−特に皮膚障害について−:石原和之、山本明史:協和発酵

March 4, 2004

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