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  1. Respiratory Index (その2)
  2. Respiratory Index (その3)
  3. 肺動脈閉塞試験
  4. 抗悪性腫瘍剤の血管外漏出時の対策
  5. 頻脈発作の治療
  6. 局所麻酔薬の基礎知識(その2)
  7. 酸素マスク
  8. PT・APTT
  9. カテコールアミン
  10. 不眠薬・睡眠薬の使い方

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研修医宿題

局所麻酔薬の基礎知識2

内藤 大督

リドカインは浸潤・硬膜外・表面・背随など多種の様式で局所麻酔に最も多く利用されている。他の局所麻酔薬に比べて作用発現が速く、麻酔効果も強く、持続時間が長いのが特徴である。アミド型の化学構造をとり、肝臓で分解された後、腎臓より排泄されるため、その代謝はエステル型よりも遅くなる。また心筋の興奮性を低下させるが収縮力を抑制しないので、抗不整脈薬としても多く使用されている薬剤である。

 その一方で、リドカインの血中濃度の上昇に伴い、全身の中毒症状が発現する。最大投与量を超えた使用ではもちろんのことだが、局所麻酔では抗不整脈薬としてより多量の薬剤を使用するため、誤って血管内に投与した場合には、局所麻酔薬としての最大投与量を超えていなくとも中毒が発現することがある。したがって、局所麻酔薬注入時には血管内に針先がないことを確認し、患者の状態を確認しながら緩徐に注入する。その症状は、主に中枢神経系及び心血管系の症状としてあらわれる。

 中枢神経系の症状は、初期症状として不安、興奮、多弁、口周囲の知覚麻痺、舌のしびれ、ふらつき、聴覚過敏、耳鳴、視覚障害、振戦等があらわれる。症状が進行すると意識消失、全身痙攣があらわれ、これらの症状に伴い低酸素血症、高炭酸ガス血症が生じるおそれがある。より重篤な場合には呼吸停止を来すこともある。

 心血管系の症状では血圧低下、徐脈、心筋収縮力の低下、心拍出量低下、刺激伝導系の抑制、心室性頻脈及び心室細動等の心室性不整脈、循環虚脱、心停止等があらわれる。

 中毒に対する処置としては呼吸を維持し、酸素を十分投与することが最も重要である。必要に応じて人工呼吸を行う。振戦や痙攣が著明であれば、ジアゼパム又は超短時間作用型バルビツール酸製剤(チオペンタールナトリウム等)を投与する。心機能抑制に対しては、カテコールアミンなどの昇圧剤を投与する。心停止を来した場合には直ちに心マッサージを開始する。

 まれに原因不明の頻脈・不整脈・血圧変動、急激な体温上昇、筋、チアノーゼ、過呼吸、発汗、アシドーシス、高カリウム血症、ミオグロビン尿等を伴う重篤な悪性高熱があらわれることがある。悪性高熱によるこれらの症状を認めた場合には、直ちに投与を中止し、ダントロレンナトリウムの静注、全身冷却、純酸素投与による過換気、酸塩基平衡の是正などの処置を要する。

 このためリドカインの使用にあったっては、最大投与量(極量)を十分把握した上で、その使用量は必要最低限にとどめることが重要である。そこで以下に京都府立医科大学付属病院におけるリドカインの採用薬剤を挙げ、その適切な使用量について記載する。

効能・効果

用量・用法

備考

キシロカインポリアンプ
リドカインA(10mL)1%(100mg)、2%(200mg)

硬膜外麻酔

100〜200mg

最大投与量

伝達麻酔

30〜200mg

350mg(7mg/kg)

浸潤麻酔

20〜200mg

(1%:3.5A、2%:1.75A))

表面麻酔

適量を塗布又は噴霧する

キシロカイン注1%エピレナミン「1:100,000」含有
リドカインV(20mL)1%(200mg)

硬膜外麻酔

100〜300mg(10〜30mL)

最大投与量

伝達麻酔

30〜200mg(3〜20mL)

500mg(10mg/kg.、2.5V)

浸潤麻酔

20〜400mg(2〜40mL)

表面麻酔

適量を塗布又は噴霧する

キシロカイン0.5%筋注用溶解液
リドカインA(3mL)0.5%(15mg)

抗生物質製剤の筋注時の疼痛緩和

1回2〜3mL(10〜15mg)を筋注する

キシロカインゼリー
リドカイン2%、30mL

表面麻酔(尿道麻酔、気管内挿管等)

男子は10〜15mL(200〜300mg)、女子は3〜5mL(60〜100mg)

キシロカインビスカス
リドカイン2%、100mL

表面麻酔(内視鏡検査、その他口腔内・咽頭・食道麻酔等)

1回5〜15mL(100〜300mg)を1日1〜3回経口投与

キシロカインポンプスプレー
リドカイン8%、80g

表面麻酔(気管支鏡検査、その他口腔内・鼻腔・咽頭麻酔等)

1〜5回の噴霧(8〜40mg)(1回で溶液0.1mL(8mg)が噴霧される)

一時に25回(200mg)以上の噴霧は避ける

キシロカイン液「4%」
リドカイン4%、20mL

表面麻酔(気管支鏡検査、その他鼻腔・咽頭・尿道麻酔等)

1回2〜5mL(80〜200mg)

 

効能・効果

用量・用法

備考

静注用キシロカイン2%
リドカイン2%A(5mL、100mg)

"期外収縮(心室性、上室性)、発作性頻脈(心室性、上室性)、急性心筋梗塞時及び手術に伴う心室性不整脈の予防"

"静注1回法:50〜100mg(0.5〜1A、1〜2mg/kg)を緩徐に静脈内注射する"

"最大投与量150mg(1.5A、3mg/kg)"

点滴用キシロカイン10%
リドカイン10%A(10mL、1g)

点滴静注法:1〜2mg/minを点滴静脈内注射する

最大投与量4mg/min

"本剤は点滴静注によってのみ投与し、静脈内1回投与は行わない"

通常は希釈して点滴投与する

"(本剤10%注射液10ml(塩酸リドカインとして1g含有)を500mLのブドウ糖液等に加えた場合、点滴速度は通常0.5〜1mL/min(1〜2mg/min)、最高2mL/min(4mg/min)である)"

Jun 24, 2004

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