研修医宿題
カテコールアミン
米花 正智
★イノバン(塩酸ドパミン)
<作用>心収縮力増強作用、腎血流増加作用、血圧上昇作用を有する。心臓に対する作用は主にβ受容体への直接作用に基づくものとされている。心臓のβ受容体を介して心収縮力、心拍出量を増加し、また冠血流量も増加させるが、心収縮力に比べて増加の程度は少ない。高用量ではα受容体を刺激し、血圧を上昇。また末梢性に低用量からドパミン受容体を介して腸間膜血流、腎血流等の内臓血流量を増やし、更に糸球体濾過値を増加させてNa利尿を起こす。
<特徴>
少量(5γ以下)投与では腎血流量が増加し、尿量が増加する。
投与量が多くなる(5γ以上)と、α受容体刺激作用が加わってくる。このため以下の作用が加わる:心拍数増加、血圧上昇、肺動脈楔入圧上昇、腎血流減少、心筋酸素消費量増加。
ドブタミンより不整脈誘発作用が強い。
<適応>
急性循環不全(心原性ショック、出血性ショック)、以下のような急性循環不全状態に使用する。
無尿、乏尿や利尿剤で利尿が得られない状態。
脈拍数の増加した状態。
他の強心、昇圧薬により副作用が認められたり、好ましい反応が得られない状態。
<使用法>
ドパミンにはドパミン受容体刺激作用、β1受容体刺激作用、α1受容体刺激作用があり、投与量によりこの3つの作用の発現の仕方が異なる。
少量2〜3γ以下の少量で使用すると、選択的にドパミン受容体を刺激し、腎臓や内臓血管の血流が増加し利尿作用が得られる。
中等量(2〜5γ)では利尿作用に加えてβ1受容体刺激作用による心筋収縮力増強作用が得られるので心不全に利用される。
5〜10γでは心収縮力の増強とともにα1受容体刺激作用により血圧が上昇する。
さらに15γ以上の高用量ではα1受容体刺激作用が強く発現し末梢血管が収縮して、血圧、肺動脈楔入圧が上昇する。
よって、ドパミンは血圧が低く、乏尿状態の心不全に有用であり、肺動脈楔入圧の上昇を防ぐにはドブタミンないしニトログリセリンなどの血管拡張薬を併用する。
★ドブトレックス(塩酸ドブトレックス)
<作用>心筋のβ1受容体に直接作用し心収縮力を増強。軽度ではあるが、血管のβ2及びα1受容体に作用し、末梢血管抵抗を軽減。他のカテコールアミン類と同等の心収縮力を現す用量で、心拍数増加作用、催不整脈作用及び血管に対する作用はいずれも他のカテコラミン類より少ない。
<特徴>
肺動脈楔入圧を減少させる。
ドパミンよりα刺激作用が少ない。
腎血流を直接増加させる作用はない。
ドパミンよりタキフィラキシーになりやすい。
<使用法>
β1受容体刺激作用により心筋収縮力を増強する。
ドパミンに比べα1受容体刺激作用や心拍数増加作用は少なく、心筋酸素消費の増大も少ない。
肺動脈楔入圧も低下させる。
ドパミン受容体刺激作用もなく、直接の利尿効果はなく、尿量の減少した重症心不全にはドパミンを併用する。
★ボスミン(エピネフリン)
<作用>
交感神経に作用し、血管に対してはα受容体刺激による収縮作用とβ受容体刺激に対する拡張作用を示す。
皮膚血管では収縮作用が優先するため、局所に適用すると末梢血管を収縮し止血作用を現し、また鼻、口腔粘膜の充血、腫脹を抑制する。
心臓においては、洞房結節の刺激発生のペースを速めて心拍数を増加させ、心筋の収縮力を強め、心拍出量を増大するので強心作用を現す。
気管支筋に対しては、弛緩作用を現し、気管支を拡張させ呼吸量を増加させる。
<適応>
気管支痙攣の寛解。
急性低血圧またはショック時の補助治療。
心停止の補助治療。
★ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
<作用>
主としてα受容体に作用し、心臓を除いてβ受容体に対する作用は弱い。作用は一過性で血圧上昇は注入中止後1〜2分で消失する。
<適応>
急性低血圧又はショック時の補助治療
心筋梗塞によるショック、敗血症によるショック、アナフィラキシーショック、循環血液量低下を伴う急性低血圧ないしショック、全身麻酔時の急性低血圧など。
★プロタノール(塩酸イソプロテレノール)
<作用>
交感神経のβ受容体に作用し、心収縮力を増強して、心拍出量を増加する。また心臓の刺激伝道系に作用して心拍数を増加するとともに末梢血管の抵抗を減少して、各組織や重要臓器の血流量を増大するので、組織循環が促進される。
<適応>
Adam-Stokes症候群(徐脈型)の発作時(高度の徐脈、心停止を含む)あるいは反復時
心筋梗塞や細菌内毒素等による急性心不全。
手術後の低心拍出量症候群。
気管支喘息の重症発作時。
Jul 30, 2004
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