成年後見制度とその周辺の課題 |
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成年後見制度とは本人が判断能力が不十分となった時に本人をサポートする為の制度です。 成年後見制度には成年後見、保佐、補助、任意後見という制度があり、更に高齢単身者を 保護し成年後見制度を補強する方策として「見守り契約」「任意代理契約」「死後事務 委任契約」といったものがあります。 これらの制度について下記の点で説明していきます。 ・法定後見の3つの違いは? ・法定後見で困る事は? ・認知症なのに後見申請をしないと困る事は? ・法定後見はお金がかかる? 無い人は申請できない? ・後見人ができる事とできない事 ・家族か後見人になりたいが ・任意後見制度とは ・任意後見制度を補完する3つの契約とは ・法定後見制度と任意後見制度の違いは ・何故成年後見人には司法書士が多いのか? ・任意後見は誰に頼んでも良いか? |
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法定後見の3つの違いは? |
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法定後見制度には「成年後見」「保佐」「補助」という3つの類型があります。 簡単に言うと、程度の差なのですが、それによってサポートの仕方に制限があります。 (1)定義上の差異 やや堅苦しい表現ですが、開始要件としてこの様に定義されています。 成年被後見人・・「精神上の障がいにより事理を弁識する能力を欠く常況にある者」 被保佐人 ・・「精神上の障がいにより事理を弁識する能力が著しく不十分な者」 被補助人 ・・「精神上の障がいにより事理を弁識する能力が不十分な者」 (2)援助者(成年後見人、保佐人、補助人)のサポートの差異 @成年後見人は成年被後見人(本人)の身上監護の為、包括的代理権と同意権・取消権を もって本人の財産を管理します。(日用品購入等は除く) A保佐人の場合も目的は同様ですが、代理権は審判によって種類を限られ、同意権・取消 権も民法13条に規定される重要な法律行為に限られます。 B補助人の場合は代理権、同意権・取消権共に審判によって選択的に指定されたものに 限られます。 (3)共通している部分は ・開始審判の申立権者は 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、 援助者・監督者、任意後見受任者、市町村長 ・援助者(成年後見人、保佐人、補助人)に対して監督人が付く場合があります。 ・居住用不動産の処分(売却、抵当権の設定、賃貸借契約の解除など)についてはいずれの 場合も家庭裁判所の許可が必要 などです。 クイック&ライトでは申立てのご相談、書類作成等承ります。 |
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法定後見で困る事は? |
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法定後見(成年後見、保佐、補助)が開始すると、その事によって本人が公職・専門職等の欠格 にあたる事があります。また、財産管理は援助者を通して家庭裁判所の監督下となりますの で、家族から見るとやりづらく感じる様になります。 (1)成年被後見人、被保佐人である事が欠格要件となるもの(補助は含まれません) 国家公務員、地方公務員、会社役員、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、 税理士、建築士等、信託受託者、建築業、旅行業、警備業など (2)財産管理が家庭裁判所の監督下になるとどうなるか? 原則として財産管理は援助者が行いますが、援助者は自分の財産とは厳格にこれを分別 して管理し、必要に応じて支出しますが、記録・報告の義務がありますし、不適切な 財産管理を行うと解任されます。 本人の財産が流用・横領されない様にという主旨なので止むを得ないのですが、例えば 事前に家庭裁判所に提出した計画を超える、不時の高額支出等は家庭裁判所の見解を 求めるなど自由度が低くなります。 また、上記で述べた様に居住用不動産の処分は許可が必要です。 本人の収入・資産によって扶養されている家族がいる場合、事前に家庭裁判所が認めた 日常の扶養費用の支給は問題ありませんが、不時の支出については家庭裁判所の見解を 求めることになります。 (3)申立ては途中で取り下げられない 上記の様に財産の厳格な分別管理は家族にとってはハードルが高いので、家族が成年 後見人として認められるケースは減ってきています。1999年以前の制度では8〜9割 であった家族後見人の比率は現在は4割程度に下がっています。家族後見が認められ ないのであれば申立てを取り下げたいと考える方もいますが、取下げは家庭裁判所の 許可が必要であり、この様な理由での取下げは許可されません。 その判断自体が本人保護の観点から問題ありと考えられるからです。 |
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認知症なのに後見申請をしないと困る事は? |
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以前は「印鑑証明書と実印があれば本人がそこにいなくても契約できる」といった風潮があり ましたが、個人情報保護法や犯罪収益移転防止法などの施行の頃から銀行や不動産業、そして 司法書士も、取引の際の本人(の意思)確認について厳しくなっています。本人の意思確認が できないと行えない取引が増えているのです。 認知症なのに後見申請をしないと「重要な取引(法律行為)ができなくなる」という事です。 裁判所統計での平成25年1〜12月の申立(総数34,105件)の後見の申立て動機からもその状況 がわかります。 |
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法定後見はお金がかかる? 無い人は申請できない? |
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法定後見にかかるお金には申立費用と、後見報酬があります。 申立費用は、@印紙代・予納郵券等 8,000円〜10,000円 A精神鑑定費用(補助は原則不要) 50,000円〜100,000円 B司法書士費用 80,000円〜150,000円 合計で140,000円〜260,000円程度です。 司法書士費用には必要書類収集費用、申立て書類作成費用等が含まれています。 申立て費用は申立て人が負担します。 後見報酬は一年に一度、後見人が家庭裁判所に「報酬付与」の申立を行う事で金額が決定され、被後見人の財産から 支 出されます。基本月額2万〜6万(財産による)と、特別な手続き等をした場合は1.5倍程度の付加が行われるようで す。 →裁判所HP(東京家裁の例) では経済的余力が無いと後見制度を利用できないのでしょうか? そんな事はありません。公的な助成制度としては厚生労働省の事業として各自治体で受け付けている「成年後見制度 利 用支援事業」があります。また、この事業による助成が困難でも、日本司法支援センター(法テラス)による申立て支援 や、成年後見センター・リーガルサポートの成年後見助成基金による支援も適用できる場合がありますので、まずは ご 相談ください。 |
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後見人ができる事と出来ない事 |
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後見人は身上監護の為に財産管理を行います。ところで身上監護とは何でしょう。 勘違いし易いのですが、介護そのものではありません。介護サービスや食事の世話等を提供する行為は職務でなく、 そ のようなサービスを受ける為の法律行為(契約)によって身上監護を行う事が職務です。 また、医療の同意については基本的には成年後見人には同意権は無いとされています。医療への同意は本来的には ご 本人が行うものですが、ご本人が意思表示が難しい場合、ご親族がいる限りは成年後見人には同意権はありませんの で、その点はご了承ください。ご親族がいない場合には医師と相談させて頂き、最前の結果を目指します。 |
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家族か後見人になりたいが |
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家族の事は家族でやりたいと思うのは当然の事ですが、一方で家族が後見人となった場合 @後見人は本人の財産を勝手に使ってよいと勘違いするケース A自分の財産との区別がいい加減になってしまうケース Bきちんとやっていても他の家族から疑われるケース 等、実際にトラブルが出やすいのも事実です。 そうした事から家庭裁判所は家族を後見人として申立てしても状況判断から(特に財産が多い場合は) @家族以外の専門家後見人を指定する A家族と専門家の2名後見人とし、専門家に財産を整理させて信託とした後専門家は辞任するケース B家族を後見人とするが、専門家の監督人を付けるケース のいずれかになるケースが多くなってきているようです。 Aのケースは専門家が辞任した後は家族だけが後見人となるのですが、財産の全てを信託とされると、月々 一定の額は信託から支給されますが、不時の出費については都度家庭裁判所からの指示書が無いと支給されない形で す。 |
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任意後見制度とは本人が十分に判断能力がある段階で、将来判断能力が低下した場合に、誰に後見人となってもらう の か、事前に決めて契約しておく制度です。 任意後見制度では判断能力がある段階で任意後見人となる人と公証役場において公正証書で契約します。 代理権の範囲、財産管理の方法等等は細かく定める事ができます。 実際に判断能力が低下した段階では本人、4親等以内の親族、任意後見人受託者の請求により家庭裁判所が任意後見 監 督人を選任し、後見がスタートします。 この場合でも任意後見人が資産を勝手に処分するなどの不行跡があれば家庭裁判所に解任されます。 |
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任意後見制度を利用される方の中で、ご家族(相続人)がいない方や、いても遠方又は疎遠である場合には、認知症にな った時だけでなく、状態の変化の確認や入院等で自分が動けなくなった場合の財産管理、あるいは死後の各種事務に つ いても契約する事ができます。それが「見守り契約」「任意代理契約」「死後事務委任契約」です。 (1)見守り契約 任意後見契約や後述の任意代理契約、死後事務委任契約をいつ発動させるかという点で、ご本人の他に 定期的に状況を把握する必要があります。通常こういった契約の場合、併せて「見守り契約」を締結しま す。毎月の面会、又は三か月に一度の面会と毎月の電話連絡といったパターンです。更に頻度の高い見守 りをご希望の場合には、警備会社やNPO法人が行う見守り制度をご紹介させて頂きます。 見守り契約期間中にも「重要な取引で一人では不安」「遠方で行う契約で体力的にきつい」等のばあには 個別の契約立会いや代理契約などを結ぶ事も可能です。 (2)任意代理契約 精神上の障害はなくても、入院等で財産管理等ができなくなってしまった場合等にご本人に代って必要 な手続きを行うための契約です。単発的な代理契約ではなく、ある程度包括的な財産管理契約になり ます。範囲、報告等、必要に応じて決める事ができます。後見等に基づく契約ではありませんが、 ご本人の身体の自由が利かなくなってきた状態で行う契約ですから、信頼感が必要です。 成年後見センター・リーガルサポート会員の司法書士の場合、リーガルサポートを任代理監督人とする 三者契約もしくは、2者契約の場合でも事前契約内容確認をリーガルサポートで行う形をとります。 契約は任意後見契約同様 (3)死後事務委任契約 死後事務委任契約とは本来相続人が行うような死後の事務を第三者に委任します。 本来委任契約は委任者が亡くなった段階で契約が終了してしまいます。しかし死後事務については契約 上の合意により行える事が判例などでも示されています。 ここで注意を要するのはこれはあくまで「事務手続きの委任」であり、同じ法的拘束力を持つものでも 財産の帰属先の指定中心の狭義の遺言執行とは内容が違います。 具体的な事務としては 1 ご遺体の引き取り・手配 2 役所、金融機関等への届出事務 3 葬儀、埋葬等に関する事務 4 親族、その他関係者等への連絡事務 5 借屋等の契約解除明渡し、敷金等の精算事務 6 遺品の整理・処分に関する事務 7 生前に発生した入院・入所費用等の精算事務 8 相続人・相続財産管理人等への遺品・相続財産の引継事務 などがあります。 契約内容については範囲、方法などを丁寧に相談させて頂いた後、公証役場で公正証書の形で契約書を 作成いたします。 |
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法定後見制度と任意後見制度の違いは? |
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法定後見制度は先に述べた3類型に従って支援方法が決まってきます。しかし、任意後見制度においては オーダーメイドで契約内容を決められます。特に財産の使い道について「家族の為にこの様な基準で不時の支出をし て ほしい」「リスクはあっても○○会社の株式は手放さないでほしい」など、法定後見では家庭裁判所が許可しない様 な 要件も相談によって定める事ができます。 但し、任意後見制度も開始後は任意後見監督人を通して家庭裁判所の監督は受けますので、任意後見人が契約に従っ た 範囲で財産管理や身上監護を行っていなければ解任される事もあります。 |
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何故成年後見人には司法書士が多いのか? |
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司法書士は専門職としては最も多く成年後見人に選任されています。 これには、幾つかの要因があります @財産管理を行う事から弁護士と並んで法律知識に明るい司法書士が適任である事。 A司法書士は不動産取引現場に近く、以前からこの問題について問題意識を持っていた事。 B早くから成年後見センター・リーガルサポートを立上げ、教育や監査体制を整備してきた事。 などです。成年後見は財産管理を行う事から高い倫理性が求められます。これを維持していく為に リーガルサポートでは教育受講を初期及び継続の条件として、制度に対する深い理解を進めると同時に 家庭裁判所に対する報告とは別にさらに頻度・内容を深めた報告を会員に求め、チェックし、その中で 課題があれば協議するなど、業務の質を維持・向上させる制度をもっているのです。弁護士会等も 最近では教育を拡充していますが、報告・チェック体制まで築いているのは司法書士のリーガルサポート だけなのです。そうした事から家庭裁判所の信頼が最も厚いという事です。 平成25年1〜12月の裁判所統計 「成年後見人等と本人の関係別件数」 |
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任意後見は誰に頼んでも良いか? |
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「任意後見契約はオーダーメイドだし、契約は公証人のチェックも受け、実際の開始後は任意後見監督人も付くの だ から、誰に頼んでも良いのでは無いか?」 もちろん、その考え方でも問題無い場合もあります。親族が状況把握しながらの場合は更な問題は出にくいでしょ う。しかし、親族がいない方等の場合、補完する3つの契約を含めた全体を含めた報告義務がある 成年後見センター・リーガルサポート会員の司法書士であれば、安心度合いが違います。 任意後見契約はリーガルサポート会員の司法書士にお任せください。 |
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