1.相続の基本

相続とは

 相続とは、亡くなった方の権利や義務が、その人と一定の関係にある親族(配偶者や子ども等の相続人)に承継されることを言います。ここに言う権利とは、預貯金等の財産や不動産などの権利すべてのことを指します。一方で、義務とは、借金等の負債すべてのことを指 します。
 本来的には、人が亡くなった段階で、その人の権利義務については、自動的に、相続人に承継されます。では、個別具体的な財産についても、相続人に自動的に移転するのでしょうか?具体的な手続きを経験された方もいらっしゃると思いますが、あえてご説明させていただきますと、自動的には移転しません。不動産であれば名義変更のための登記手続きを、預貯金であれば金融機関に対しての届け出などが必要になります。
 なぜ、「自動的に」個々の財産まで移転しないのでしょうか?遺産の取得については、 民法という法律に規定があるのですが、法律では、相続人が遺産から取得する財産の割合 、つまり「相続分」については、一応定められていますが、具体的に、だれがどの財産を取得するのかについては、何も規定がありません。あくまで割合が定められているだけです。

法定相続分とは

 ご参考までに、この相続分についても、簡単にご説明させていただきます。遺産の取得 についての話しがまとまらない場合などにおいては、最終的には、相続分に応じた額の遺産を取得するよう調整されることになります。

1.相続人が子供と配偶者の場合
 相続分については、配偶者が遺産の半分を取得し、残りを子供達で均等に分けることになります。 たとえば、相続人が配偶者と子供3人の場合、相続分は、配偶者が6分の3、子供が各6分の1となります。

2.子がなく相続人が親(親がない場合には、祖父母等の直系尊属)と配偶者の場合
 この場合の相続分については、配偶者が遺産の3分の2を、被相続人の 親達が遺産の3分の1を取得します。

3.子も親もなく相続人が兄弟と配偶者の場合
 この場合の相続分については、配偶者が遺産の4分の3を、被相続人の 兄弟姉妹達が、遺産の4分の1を取得します。たとえば、相続人が、被相続人の配偶者と、被相続人の4人の兄弟だった場合、配偶者の相続分については4分の3、 兄弟姉妹については、各自16分の1を取得することになります。

 なお、被相続人に配偶者がいない場合には原則として、下記のようになります。相続人が存在せず、遺言もない場合には、原則として、遺産は国に帰属します。
  1.子供がいれば子供達が均等の割合で相続する。
  2.子供がなく、親や祖父母などの直系尊属がいる場合には、直系尊属が均等の割合で相続する。※片親が存命で、祖父母も存命の場合には、片親のみが単独で相続します。
  3.子供がなく、親や祖父母などの直系尊属も亡くなっている場合には、兄弟姉妹が均等の割合で相続する。

遺産分割協議とは

 上述のように、民法では割合(相続分)しか定められていないため、実際の遺産の分け方については、 当事者間で協議をする必要があるのです。そのため、先ほども申し上げたとおり、遺産は、相続人に対し て自動的には移転しないのです。
 たとえば金融機関からすれば、戸籍などの書類さえ提出すれば、誰が相続人で、その相続人の相続分がどれだけなのかについては分かります。しかし、先ほども申し上げたとおり、あくまで割合しか定まっていないため、その預貯金をだれが取得するのかまでは、金融機関側はわかりません。そのため、当事者間での協議が前提となり、その結果に基づいて、金融機関に対し書類を提出して手続きをとることになるの です。
 この当事者の協議、つまり遺産の分け方についての話し合いを、遺産分割協議といいます。法律上定められている「相続分」については、遺産分割協議(当事者間での協議)で修正が可能です。ちょっとわか りにくいとは思いますが、具体的には、当事者間で話がまとまれば、相続人の内の一人がすべての財産を取得するという協議も有効なのです。


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「争族」対策のすゝめ  目次


   1.相続の基本

  2.「争族」とは?

   3.数字から見る相続  遺産が少なければ揉めない?

   4.なぜ「争族」になってしまうのか

   5.相続の件数、遺言書の作成件数

   6.遺言書の種類

   7.遺言書 書くべき内容・書くべき場合

   8.その他の遺言活用法

   9.遺言書に加えて