7.遺言書に書くべき内容・書くべき場合

 さて、どのような遺言があるのかご説明させていただいたところで、具体的にどのようなことを遺言書に書けばよいのか、どのような場合に遺言書を作成すべきかについて簡単にお話しさせていただきます。
遺言書の内容としては、ご自身の財産の内容を洗い出し、各相続人の意向等もある程度加味して、どの遺産を誰に取得させるのか、ということをはっきりと遺言書に書いておけば、基本的には足ります。もちろん、思わぬ落とし穴があったりもしますので、専門家に相談されることをお勧めいたします。

1.相続人同士の仲が悪い場合

 各相続人の取得する財産を遺言で指定することによって、争いが防げます。 例えば、不動産は長男に、預貯金は二男に、といった具合に指定しておけば、仲の悪い当事者同士での話し合いが不要になり、手続きがスムーズに進みます。

2.相続人の内の一人が介護等を行っていた場合

 相続人の内の一人が、介護等、被相続人の身の回りのケアをしていたときに、それにより、被相続人の遺産が維持または増加した場合には、その相続人に寄与分(維持増加を加味して、相続分を上乗せすること)が認められることがあります。
しかし、それがどの程度認められるかは流動的です。相続人間で話し合いがまとまらなければ、最終的には裁判所で判断することになります。
このような場合には、遺言書で、その相続人の取得分を他の相続人より多めにしておくことが効果的でしょう。

3.遺産が不動産のみの場合など、その内容に偏りがある。

 このような場合には、その不動産に現在住んでいる人がその不動産を取得するとの内容の遺言を残すのが有効でしょう。また、遺言書の作成に合わせて、その不動産に居住している相続人に対し、将来他の相続人から遺留分を請求された場合に備えるように指示しておくことが必要です。 もし、その不動産を将来利用する予定がないのであれば、遺言書で、その不動産を処分するよう指定してしまうのも一つの手です。

4.前妻の子がいる等、相続人同士に面識がほとんどない場合

 この場合には、当事者の話し合いがまとまるかどうかに不安が残るので、予め遺言書で、各人の取得する財産を決めておくべきでしょう。

5.相続人が自分の配偶者と、兄弟姉妹である場合

 この場合には、配偶者の方にすべての財産を取得してもらいたいところですが、当事者(兄弟姉妹)の中の一人が権利を主張する場合には、その人の相続分に応じた財産は渡さなければいけなくなってしまいます。 そのため、自分の配偶者にすべての財産を相続させるという内容で遺言書を作っておく必要があります。

補足

 もちろん、遺言を作ったからといって問題が全部解決されるわけではありません。
 実際の作成に際しては、遺留分(各相続人が遺産に対して有している固有の権利です。)や、相続税などについても検討する必要があります。
 しかし、「争族」にさせないためには、まずはとにかく遺言を作っておくことをお勧めいたします。そうすれば、トラブルの火種が小さくなることは間違いありません。
 次のページでは、その他の遺言の活用法について説明させていただきます。


▼次のページ「8.その他の遺言活用法」へ

「争族」対策のすゝめ  目次


   1.相続の基本

  2.「争族」とは?

   3.数字から見る相続  遺産が少なければ揉めない?

   4.なぜ「争族」になってしまうのか

   5.相続の件数、遺言書の作成件数

   6.遺言書の種類

   7.遺言書 書くべき内容・書くべき場合

   8.その他の遺言活用法

   9.遺言書に加えて