5.相続の件数、遺言書の作成件数

 遺言書という言葉自体は広く浸透しているものと思われます。では、実際に遺言はどの程度利用されているのかについて、簡単にご説明させていただきます。遺言書の種類や役割については、後程、ご説明させていただきます。

相続の件数・自筆証書遺言の件数・公正証書遺言の件数

 厚生労働省 平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、平成23年の年間死亡数は、125万3463人とな っております。つまり、年間で125万件の相続があったのです。
  これに対し、平成24年度司法統計という裁判所から公表されているデータによれば、自筆証書遺言の検認手続きの件数、つまり相続に際して、自筆証書遺言があったと考えられる件数は、1万6014件となっております。検認手続きというのは、相続開始後に遺言書を実際に使用する前提として必要な手続きです。
 公正証書遺言については、直近の作成件数については、わかりませんが、日本公証人連合会の統計によれば、平成24年度の作成件数としては、8万8000件ほどで、毎年増えているようです。現在では、その件数については、もう少し多いと考えてもよいでしょう。

わずか8%?

 125万件もある相続の中で、遺言書を作成していると思われるケースが、約10万件。わずか8%。これは多い数字でしょうか、少ない数字でしょうか。
例えば、会社の経営者の方や資産家の方等、行政書士や税理士等といった専門家と接点がある方については、専門家と相談した結果、何らかの形で遺言書を作成しているということは多いかと思われます。私見ではありますが、10万件の内のほとんどが、そのような形で作成されているのではないでしょうか?
しかし、先ほども述べましたとおり、遺産の額の大小については、相続においてもめるかどうかの決め手にはなりません。遺産が少ししかなくても、もめるときはもめてしまうのです。
そのような観点から考えると、10万件という数字は少ないと、私は思います。
詳細については、後述いたしますが、揉めない相続のためには、遺産の分け方をあらかじめ定めておくことが重要です。そのためには、遺言書の作成は必須であると私は考えております。


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「争族」対策のすゝめ  目次


   1.相続の基本

  2.「争族」とは?

   3.数字から見る相続  遺産が少なければ揉めない?

   4.なぜ「争族」になってしまうのか

   5.相続の件数、遺言書の作成件数

   6.遺言書の種類

   7.遺言書 書くべき内容・書くべき場合

   8.その他の遺言活用法

   9.遺言書に加えて