6.遺言の種類
これまでお話しさせていただきましたように、相続に際しては、金額の大小にかかわらず、揉めるときは揉めるのです。揉めない相続のためには、遺言書の作成が必須であると私は考えております。
では、遺言書にはどのようなものがあるのか、ご説明させていただきます。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といった種類のものがありますが、作成されるものとしては、自筆証書遺言と公正証書遺言の二種類がほとんどといって良いでしょう。以下、それぞれの特徴について説明します。
自筆証書遺言とは?
日付、自分の名前、本文すべてを自分で書いて、印鑑を押せばそれで有効であるため、作成が手軽ですし、書き直しも容易です。
例えば、以下のような内容を、自筆で紙に書き、名前の後に印鑑を押せば、遺言としては成立します。
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遺言書
私は、私の有する一切の財産を、私の妻○○○○(昭和○○年〇月〇日生)に相続させる。
平成○○年○○月○○日
埼玉県朝霞市〇〇〇一丁目〇番〇号
遺言者 藤田 孝久 (印)
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実際に書いてみると、簡単そうではありますが、意外と落とし穴も多いのが自筆証書遺言です。
例えば、印鑑を押し忘れてしまったり、日付を〇月吉日としてしまったり、財産の特定が不十分であったりするとせっかくの遺言が何の効力も持たないというケースは非常に多くあります。
もし皆さんが自筆証書遺言を作成された際には、行政書士等の専門家に必ず見てもらいましょう。 専門家の関与無しに作成してしまうと、せっかく作成した遺言が、ふたを開けてみると、まったく使えないという事態も生じる可能性が多くありますので、ご注意ください。
その他、自筆証書遺言の特徴としては、いざ相続が発生した際には、家庭裁判所で「検認」手続きをとる必要があるため、事後的に少々手間がかかります。 その他にも、遺言書の紛失のリスクもあります。
このように、ある意味お手軽ではありますが、意外と大変なのが自筆証書遺言です。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証役場という役所で作成する遺言です。
どのように書くかといいますと、実は、書く必要はないのです。公証人が、遺言者の依頼に基づいて作成するものなので、自筆証書遺言とは異なり、頑張って長い文章を書くという必要はありません。
メリットとしては、公証人という専門家に作成を依頼する遺言ですので、内容については、確実といえるでしょう。また、遺言書の原本については、公証役場で保管されますので、紛失や偽造・変造の恐れはありませんし、相続開始後に家庭裁判所での検認手続きを取る必要もありません。
デメリットとしては、遺産の額や、遺言の内容に応じた手数料がかかります。公証役場の費用、つまり実費としては5万円~10万円程度になることが多いと思われますが、内容が細かかったり、遺産の額が大きかったりすると、多額の費用がかかることもあります。
また、証人も二人用意しなければいけません。この証人は、ご家族ではなく、第三者でなければなることができません。
作成のハードルは高いですが、それ相応のものを作ることができます。
なお、公正証書遺言の作成に関しては、行政書士等の専門家を利用することをお勧めいたします。公正証書遺言の作成のために必要な資料については、公証役場では集めてはくれませんし、相談についても、公証役場に行ってする必要があります。そのため、ご自身で行うのは結構大変でしょうし、専門家を依頼する何よりも大きなメリットとしては、公証人という専門家と行政書士等の専門家による二重のチェックが行われるので、内容がより緻密で正確なものになるということです。
まとめ
作成される方の年齢や状況によって、どちらの遺言にするかを検討されるのが良いと思います。
若い方が、もしもに備えて作成される場合や、緊急性がある場合には、自筆証書遺言で良いと思いますが、相続対策を しっかり検討したい場合には、公正証書遺言の作成をお勧めいたします。
次のページでは、遺言書を書くべき場合と書くべき内容についてご説明いたします。
「争族」対策のすゝめ 目次
1.相続の基本
2.「争族」とは?
3.数字から見る相続 遺産が少なければ揉めない?
4.なぜ「争族」になってしまうのか
5.相続の件数、遺言書の作成件数
6.遺言書の種類
7.遺言書 書くべき内容・書くべき場合
8.その他の遺言活用法
9.遺言書に加えて