3.数字から見る相続  遺産が少なければ揉めない?

相続税の課税件数と、家庭裁判所の相続件数

 財務省の統計(相続税の課税状況の推移)によれば、平成23年度の相続の件数は125万3066件 となっており、このうち、相続税の課税対象となったのは約4%にあたる5万1559件となっております。
一方で、裁判所の統計(平成23年度司法統計)によれば、家庭裁判所に持ち込まれた相続関係の相談件数は、17万2890件となっております。
いずれも、統計をもとにした数字ですが、ここから何が読み取れるのでしょうか。

相続税がかかる相続って?

 現在の法律においては、遺産の総額が、(相続人の人数×600万円)+3000万円を超えた場合にの み、相続税が課税されます。例えば、旦那さんが亡くなり、その相続人が奥さんと、長男、二男というケー スですと、相続人は3人ですので、600万円×3人+3000万円、つまり、遺産が4800万円を超 えなければ相続税はかからないのです。相続税がかかってくる相続というのは、大きい額の遺産がある相続だといえるでしょう。

揉める相続はどんな相続?

 一方で、家庭裁判所での相談件数については、相続税がかかる相続の件数と比べると、約3.5倍の数字になっています。裁判所での相談については、最終手段だと考えられますから、実際にはさらに多くの相続人が、相続について問題を抱えていると言えるでしょう。
 もちろん、遺産が一切なく、借金のみの相続の場合で、相続放棄について相談に行くケースや、自筆証書遺言の検認手続き等もあるでしょうから、相談内容としては必ずしも「争族」問題ではないでしょう。しかし 、この内の一定割合については、「争族」問題についての相談です。また、相談窓口については裁判所だけではありません。我々行政書士や、弁護士、司法書士、税理士等の事務所に相談に行く方も多々いるでしょうから、実際に問題を抱えている人の数は、相続税の課税対象となった相続よりも多い件数になるものと推測されます。つまり、遺産が多いから揉めるわけではないと思われます。

数字と図からみる争族問題

 では、裁判所が公表している司法統計という資料に基づき、もめている相続の件数と、遺産の総額との関係を見てみましょう。
 遺産分割調停、つまり、遺産の取得について、裁判所での話し合いで解決したというケースは平成24年度で、 8791件あります
 これを遺産別に分類すると以下のとおりです。

遺産の総額

件数

割合

1000万円以下

 2849件

32.4%

75.7%

87.1

1000万円を超え5000万円以下

 3807件

43.3%

5000万円を超え1億円以下

 1003件

11.4%

 

1億を超え5億円以下

 556件

6.3%

 

5億を超える

47件

0.5%

算定不能・不詳

529件

6%


 遺産の総額が1億円以下のものが占める割合は、87%にあたる7659件です。遺産が一億円を超えるケースというのは少ないでしょうから、ある 程度妥当な数字でしょう。
 遺産が5000万円以下のものが占める割合は、76%にあたる6656件です。遺産が 5000万円というと、やはり多い数字ですので、揉めるものわかります。
 遺産が1000万円以下のものが占める割合については、全体の32%にあたる2849件となっております。
 もめている相続の内、約30パーセントは遺産の額が1000万円以下なのです。
 遺産の総額が1000万円というと、もちろん大金ですが、相続人が複数いれば、各相続人の手元に入って来るのは、500万円以下となります。この500万円をもらえるかどうか等について争うわけです。
 500万円以下のお金のために、身内ともめているのが30パーセントなのです。
 500万円という額と、家族関係、どちらが大事でしょうか。

まとめ

 以上の数字からすれば、遺産の額によってもめるかどうかが決まるわけではないということが分かりますよね。
 ちなみに、上図の8791件というのは、あくまで、話し合いで解決した件数です。
 話し合いで解決しなかったものについても含めると、全体で1万1737件という数字になります。これは、裁判所での手続きが行われた件数です。
 弁護士費用として数十万円を支出し、更に時間までかけるという選択をしたうえでの数字ですから、表に出てこない数字、つまり、もめてしまったけれども、当事者間で何とか話し合いで解決した事例や、先ほど申し上げた家庭裁判所での相談件数なども考えると、決して他人ごとではない数字だと思われます。


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「争族」対策のすゝめ  目次


   1.相続の基本

  2.「争族」とは?

   3.数字から見る相続  遺産が少なければ揉めない?

   4.なぜ「争族」になってしまうのか

   5.相続の件数、遺言書の作成件数

   6.遺言書の種類

   7.遺言書 書くべき内容・書くべき場合

   8.その他の遺言活用法

   9.遺言書に加えて